廃熱を電力に変換する技術で大きな前進 ―チタン添加... | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-
【本学研究者情報】 〇学際科学フロンティア研究所/材料科学高等研究所 助教 双逸研究室ウェブサイト 【発表のポイント】 クロム窒化物(CrN)薄膜に少量のチタン(Ti)を添加することで、室温成膜のまま...
2026年10月13日、東北大学が、熱を電気に変える薄い膜の性能を高めたと発表しました。
ただ、この材料は電気をよく通すようにすると、生まれる電圧が小さくなります。
東北大の膜は、電気を通しやすくなったうえに、電圧も出やすくなりました。膜の中で何が減り、何が増えたのでしょうか。
熱電材料は温度差を電気に変える

熱電材料って何?

温度差を電気に直接変える材料なの。片側を温めて、反対側を冷やすと、材料の中に電圧が生まれるのよ。

外から電源をつながなくても発電できるの。機械や電子機器が出す熱の多くは、使われないまま逃げているわ。その熱を生かす技術として注目されてきたのよ。

へえ、逃げていく熱を拾うんだね。

発電の性能の目安は、2つの値で決まるの。1つは電圧の出やすさ。温度差1度あたりに生まれる電圧の大きさのことよ。

もう1つは電気の通りやすさ、つまり抵抗の小ささね。
電圧の出やすさは、水を押し出す力の強さに近いわ。ただ、たとえはここまでで、材料の中はもっと複雑なの。

押す力も通りやすさも、大きいほどいいんだね。
熱電材料は電気を通すほど電圧が出にくい

てっきり、両方とも高くすればいいだけだと思ってた。

それが難しいのよ。2つとも、熱電材料の中で電気を運ぶ電子の数に左右されるの。電子が多いと電気はよく通るけど、電圧の出やすさは下がってしまうわ。

ただ、電気の通りやすさは電子の数だけでは決まらないの。数が同じなら、電子1つ1つが動きやすいほど電気はよく通るのよ。

道にたとえると、同じ人数でも、道が空いていればすいすい進めるのと同じね。ただ、たとえで言えるのは、数と進みやすさの2つで決まるところまでよ。

なるほど、数と動きやすさの2つで決まるんだね。
室温で作るクロム窒化物の膜は電子が多すぎる

研究グループは、クロムという金属と窒素が結びついたクロム窒化物を使ったの。丈夫で、化学的に安定しているわ。
環境への負担が小さい元素でできていて、膜にする熱電材料の候補として期待されてきたのよ。

丈夫で安定なら、そのまま膜にすれば使えそうだね。

そう簡単じゃないの。
この結晶では、原子が決まった場所に規則正しく並んでいるわ。ところが室温に近い温度で膜を作ると、窒素が入るはずの場所の一部が空いて、穴ができてしまうのよ。

この穴は、クロム窒化物では電子を出す元として働くの。
化学でよく使う考え方では、窒素は結びついた相手から電子を受け取るから、抜けると受け取り手のいない電子が余るのよ。

そっか、それで電子が増えちゃうんだ。

だから、室温で作った膜は電子が多すぎたの。電気はよく通すけど、電圧の出やすさは大きく抑えられていたわ。

穴ができない作り方はないの?

穴を避けるには、高温で膜を作るなどの方法が要るの。でもそれだと、熱に弱いプラスチックのフィルムなどには向かないのよ。
東北大はチタンで窒素の抜けた穴を減らした

そこで東北大学の双逸(シュアン イ)助教や須藤祐司教授らは、窒素をしっかりつかまえる元素を足すことにしたの。そうすれば、窒素が抜けにくくなると考えたのよ。
足したのはチタンよ。

クロムよりも窒素と強く結びつきやすいと見込まれる元素なの。
膜は室温のまま、金属の原子を窒素と反応させながら板に積もらせて作ったわ。

本当に穴は減ったの?

分析すると、チタン入りの膜はチタンなしより窒素を多く含んでいたの。X線を当てる測定でも、穴があることを示す信号は、チタンを増やすほど小さくなっていたわ。
チタンが穴をできにくくしていたと裏付ける結果なのよ。

チタン入りの膜では電子が減ったのに動きやすくなった

チタンを足すと膜の中の電子の数は減って、そのぶん電圧の出やすさは上がったの。

でも電子が減ったら、電気は通りにくくなるよね。

ふつうはそうなるはずよね。ところがチタン入りの膜は、むしろ電気を通しやすくなったの。

電子の数が減るのと同時に、電子1つ1つの動きやすさが約2桁、つまり100倍ほども上がっていたのよ。
道のたとえなら、人数が減っても、道がぐっと空いてすいすい進めるようになれば、通れる人の数は増えることがあるわ。ただ、なぜ空いたのかは、このたとえでは言えないの。

100倍ってかなり大きいね。どうして動きやすくなったの?

発表は、どちらの変化も穴を減らしたことで同時に起きたとしているの。ただ、穴が減るとなぜ動きやすくなるのかは、発表資料では詳しく説明されていないのよ。

さて、気になる発電の性能の目安は、チタンなしのクロム窒化物の膜と比べると約250倍になったわ。
もっとも、高温で作る従来の熱電材料の膜と比べると、同じくらいの水準よ。

室温で作れる熱電材料の膜は使える土台が広がる

室温で作れるなら、熱に弱い土台も候補に入るの。
熱いフライパンに紙を載せられないのと同じで、熱に弱い物は高温の工程に向かないのよ。もっとも、どこまで耐えられるかは物によって違うわ。

使える土台の選択肢が増えるんだね。

東北大は、土台の制約が大きくゆるむので、捨てられる熱を回収する技術の選択肢が広がるとしているわ。
さらに、チタン入りの膜を熱電材料として使った部品も、ガラスの板の上に作ったの。膜の断面の広さをそろえて比べると、出力は従来の薄い膜の部品と同じくらいで、温度差の大きい範囲では上回ったわ。

プラスチックのフィルムの上でも、もう動いたの?

まだなの。東北大によると、窒化物の薄い膜を使った熱電の部品は、今回初めて動作が確かめられたんですって。
土台はガラスで、曲げられるプラスチックのフィルムの上での確認は、これからなのよ。
まとめ
- 熱電材料は、電子が多いと電気はよく通るが、電圧は出にくい
- 室温で作るクロム窒化物の膜は、窒素の抜けた穴のせいで電子が多すぎた
- チタンを足すと穴が減って電子の数が下がり、電圧が出やすくなった
- 同時に電子の動きやすさが約2桁上がり、電気も通しやすくなった
- 発電の性能の目安はチタンなしの膜の約250倍で、高温で作る従来の膜と同じくらいの水準
電気の通りやすさは、電子の数と動きやすさの両方で決まります。電圧の出やすさを下げていたのは、そのうち数のほうでした。
だから数を減らしても、動きやすさが上がれば電気の通りやすさは落ちません。東北大は、穴を減らして2つを同時に整えるやり方が、熱電材料づくりの新しい指針になるとしています。
この記事の出典は、東北大学が2026年10月13日に出したプレスリリースです。論文は10月12日に学術誌Journal of Materials Chemistry Aに載りました。
資料は東北大学のプレスページとプレスリリースのPDFです。論文は掲載ページで読めます。


