World Nuclear Industry Status Report 2026
The World Nuclear Industry Status Report 2026 (WNISR2026) assesses on 596 pages the status and trends of the international nuclear industry. It provides a compr…
パリの会社が2026年9月29日、世界の原子力産業の現状をまとめた報告書「WNISR2026」を公表しました。
それによると、世界全体の2025年の発電量は、太陽光が原子力を初めて上回りました。
ところが、発電設備が一度に出せる力で比べると、太陽光は原子力の約6.5倍もあります。設備が6.5倍もあるのに、1年間の電気の量がほぼ同じなのはなぜでしょうか。
電力と電力量は別のものさし

この話は、電力と電力量を分けて考えるのがコツなんだ。

電力も電力量も、同じもののことだと思ってたわ。

それが別物なんだ。電気には、2つのものさしがあるよ。

1つは電力。ある瞬間に、どれだけの勢いで電気をつくるか、または使うかを表すんだ。
単位はワット、Wと書くよ。

もう1つは電力量。その勢いがどれだけ続いたかまで含めた量で、単位はWh、ワット時を使うんだ。
中学の理科で習う「電力×時間=電力量」の式が、2つを結んでいるよ。

スマホの充電器に書いてある「20W」は、電力だよ。
電気代の明細にあるkWh、キロワット時は電力量で、1kWの勢いで1時間使い続けると1kWhなんだ。

じゃあ、発電だと、その勢いと量はどう呼ぶの?

全力を出したときの電力を設備容量と呼んで、GWで表すんだ。
GWはギガワットと読んで、10億ワットのことだよ。

これに対して、1年間に実際につくった電力量が発電量。
TWh、テラワット時で数えて、1兆ワット時のことなんだ。
送り出した電気の量で太陽光が原子力を上回った

2025年の太陽光の発電量は2,783 TWh、原子力は2,703 TWhだったんだ。
両者の差は、80 TWhしかないよ。

ほとんど同じなのね。数が大きすぎて、ぴんとこないけど。

ただ、この比べ方には条件があるんだ。発電所も、自分の設備を動かすために電気を使うよ。
この報告書は、その分を差し引いて、発電所の外へ送り出した量どうしで比べているんだ。

自分で使う分があるなんて、考えたこともなかったわ。

農家が収穫した量から自家用の分を引いて、出荷した量で比べるようなものだね。
ただ、重なるのは、引いた後の量で比べるところだけだよ。

引く前の量で比べたら、結果はちがうの?

差し引く前の量では、世界の発電量全体に占める割合が太陽光8.7%、原子力8.8%で、原子力のほうがわずかに上なんだ。
そのため太陽光が上回ったという結果は、送り出した量どうしで比べた場合に限られるよ。
太陽光の設備容量は原子力の6.5倍ある

実は、設備容量で比べると、見え方が変わるんだ。
2025年の設備容量は、太陽光が2,383 GW、動いている原子炉が368.6 GWだよ。

2,383を368.6で割ると、太陽光は原子力の約6.5倍になるんだ。

6.5倍も! それなのに、つくった量はほとんど同じなの?

設備容量だけを見ても、つくった電力量は分からないんだ。
この報告書も、発電の種類ごとに1年のうち全力で動いている割合が違うので、設備容量はそのまま比べられないと書いているよ。
全力で1年動いた場合の何%かで発電量が決まる

その割合って、どうやって測るの?

2つのものさしをつなぐのが、設備利用率なんだ。
1年は365日×24で8,760時間あるよ。設備が1年中ずっと全力で動いたときの電力量を、100%とするんだ。

設備利用率は、実際の発電量がその何%にあたるかを表す数字だよ。
100点満点のテストの得点率みたいなものだね。ただ、重なるのは、満点に対する何%かという点だけだよ。


報告書の数字から計算すると、太陽光の2,383 GWが1年中全力で動いた場合の電力量は、約2万900 TWhになるんだ。
実際の2,783 TWhはその約13%で、これが太陽光の設備利用率の計算値だよ。

13%って、ずいぶん低いのね。原子力はどうなの?

同じように、原子力の368.6 GWが1年中全力で動くと、約3,230 TWhだよ。
実際の2,703 TWhは、その約84%にあたるんだ。

ただ、2,383 GWは、1年で510 GW増えたあとの数なんだ。
前の年は1,873 GWだったよ。

増えたあとの数で割ると、低めに出ちゃうのね。

そうなんだ。前の年と今年の平均の約2,130 GWで割ると、約15%になるよ。
だから太陽光は、約13〜15%と幅をもたせて見ておくんだ。
太陽光は夜にゼロになり原子力は夜も動く

太陽光の設備利用率が低い主な原因は、光が当たっているあいだしか発電できないことなんだ。
夜はゼロになるよ。

昼のあいだは、ずっと全力で発電してるんだと思ってたわ。

昼でも、朝や夕方は光が斜めに当たるから弱くなるんだ。
曇りや雨の日も、出力が落ちるよ。

日中だけ開く店と、24時間開いているコンビニを思い浮かべてみて。同じ大きさでも、1年で働く長さは、コンビニのほうがずっと長いよね。
ただ、重なるのは動ける長さの違いだけで、太陽光は出力も天気で変わるんだ。

一方、多くの原子力発電所は、燃料の交換や点検の期間を除けば、昼も夜も天気に関係なく、ほぼ一定の出力で動き続けるんだ。
そのため同じ1 GWの設備でも、1年でつくれる電力量は原子力のほうが多いよ。

約84%を約13〜15%で割ると、およそ6倍の開きがあるんだ。

6倍の開き……さっきの設備の6.5倍と、近い大きさね。

まとめ
- 2026年9月29日公表の報告書で、2025年の世界の太陽光の発電量が原子力を初めて上回った
- 上回ったのは、発電所の外へ送り出した電気の量どうしで比べた場合
- 2025年の設備容量は、太陽光が原子力の約6.5倍
- 設備容量は電力(W)、発電量は電力量(Wh)で、設備利用率がその2つをつなぐ
6.5倍の設備が6分の1ほどの割合でしか動かないので、6.5÷6でほぼ1倍、つまり2025年の発電量は同じくらいでした。
この記事の数字は、「World Nuclear Industry Status Report 2026」によります。
レポートの発行元はパリのMycle Schneider Consultingで、公表日は2026年9月29日です。
38ページ、430〜431ページ、433ページを使いました。
発電量はEnergy Institute、設備容量はIRENAと国際原子力機関(IAEA)の統計がもとです。設備利用率の値は、これらの数字からこの記事で計算しました。


