「技術のことば」シリーズのアイキャッチ。マゼンタとシアンの抽象背景に、シリーズ名と用語「ペロブスカイト」
ペロブスカイト太陽電池とは?

注目の科学技術や社会課題、今さら聞けないことや、なかなか説明しづらい素朴な疑問を、産総研のプロフェッショナルが分かりやすく解説します!

ペロブスカイト太陽電池という言葉を、ニュースで見かけるようになりました。薄くて軽く、曲げられる太陽電池として紹介されています。
ところでペロブスカイトとは、何なのでしょうか。新しく作られた素材そのものを指すと思っていると、少し外れます。この言葉が指しているのは、物質そのものではありませんでした。

この記事の定義と数値は産総研マガジン「ペロブスカイト太陽電池とは?」によります。耐久性の実績はNIMSが2024年2月5日に公開した発表に記載されたものです。

もとは、鉱物の名前だった

産総研の解説はこう始まります。「ペロブスカイトとは灰チタン石(かいチタンせき)の結晶のこと」。出発点は実験室で作られた新素材ではなく、地面から掘り出される鉱物でした。

そしてこの鉱物の結晶には独特の並び方があり、それをペロブスカイト構造と呼びます。ここまでなら、ひとつの鉱物と、その形だけを指していました。

名前が指しているのは、中身ではなく形

ところが同じ並び方をする結晶は、ほかにもありました。しかも産総研は「さまざまな物質を組み合わせて作ることもできる」と記しています。つまり同じ並び方さえ保てば、中身の材料は入れ替えてよいということです。

だから呼び名のほうが動き、「それら結晶材料を総称して『ペロブスカイト』と呼ぶようになりました」と解説は続きます。

透明な立方体の結晶格子。3種類の光る球が等間隔に整列し、同じ長さの棒で結ばれている
だから「ペロブスカイト太陽電池」は総称になる

ここまで来ると、最初の疑問がほどけます。ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイトという物質で作られた電池のことではありません。実際はペロブスカイト構造を持つ材料を使った太陽電池を、まとめて呼んだ名前でした。

つまりこの呼び名が約束しているのは中身ではなく、並び方でした。同じ形のまま材料を入れ替えれば、別の性質を持つペロブスカイトができます。研究者が探しているのは、その入れ替えの組み合わせです。

同じ形の透明な立方体が3つ並び、中の球の色だけが異なり、それぞれ違う色に光っている
塗って作れて、10分の1の軽さ

形が決まっていて中身を選べることは、作り方も変えました。産総研は「材料を塗布したり、印刷したりすることで製造できる」と説明しています。だから大量に作りやすく、かかる費用も抑えられると産総研は見ました。

しかも薄い膜でできているので曲げに強く、軽いフィルムを土台に使えます。重さはシリコンの太陽電池と比べて約10分の1を目指せると産総研は書きました。フィルム化すれば1平方メートルあたり1kg程度の軽量化も期待されると書きました。

日本で生まれて、効率は3%台から始まった

ところでこの技術の出どころは日本で、桐蔭横浜大学教授の宮坂力氏のグループが考え出したものです。ただし最初の変換効率は3%台で、あまり注目されなかったと産総研は書いています。

転機が来たのは、その数年後でした。オックスフォード大学と産総研の共同研究で固体型の開発に成功し、効率が10%以上に達したことで世界へ広がります。

課題も、まだ残っている

もちろん良いことばかりではなく、産総研は課題を2つ挙げました。

  • 寿命が短く、耐久性が低いこと
  • 大面積にするのが難しいこと

ただし、このうち耐久性のほうは少しずつ動いています。NIMSは2024年2月、60℃という高い温度の中でも効率20%以上を保ったと発表しました。しかも1,000時間以上、発電を続けています。

まとめ
  • ペロブスカイトはもともと灰チタン石という鉱物の結晶を指していた
  • その独特の並び方をペロブスカイト構造と呼ぶ
  • 同じ構造を持つ物質は他にもあり、組み合わせて作ることもできる
  • だからいまは、それら結晶材料の総称として使われている
  • 指しているのは中身ではなく、並び方
  • 課題は寿命の短さと大面積化の難しさ

ペロブスカイトという名前が約束しているのは、中身の物質ではなく結晶の並び方でした。だから同じ並び方を保ったまま中身を入れ替えることができ、その組み合わせ次第で性質の違う結晶が生まれます。