「技術のことば」シリーズのアイキャッチ。マゼンタとシアンの抽象背景に、シリーズ名と用語「ペロブスカイト」
ペロブスカイト太陽電池とは?

注目の科学技術や社会課題、今さら聞けないことや、なかなか説明しづらい素朴な疑問を、産総研のプロフェッショナルが分かりやすく解説します!

ペロブスカイト太陽電池という言葉を、ニュースで見かけるようになりました。薄くて軽く、曲げられる太陽電池として紹介されています。
ところでペロブスカイトとは、何なのでしょうか。新しく作られた素材そのものを指すと思っていると、少し外れます。この言葉が指しているのは、物質そのものではありませんでした。

この記事の定義と数値は産総研マガジン「ペロブスカイト太陽電池とは?」によります。結晶の形と組み合わせの計算は理化学研究所の2017年の発表、耐久性はNIMSの2024年2月5日の発表によります。

もとは、鉱物の名前だった

産総研の解説によると、ペロブスカイトは灰チタン石という鉱物の結晶を指す言葉でした。そしてこの鉱物の結晶が持つ独特の並び方を、ペロブスカイト構造と呼びます。

ところが同じ並び方をする結晶は、ほかにもありました。そこでいまは、この並び方を持つ結晶材料をまとめてペロブスカイトと呼んでいます。では、その並び方とはどんな形なのでしょうか。

透明な立方体の結晶格子。3種類の光る球が等間隔に整列し、同じ長さの棒で結ばれている
立方体の頂点と中心と面に、3種類の席がある

理化学研究所の説明では、典型的なペロブスカイトの結晶は立方体の形をしています。そして原子やイオンが座る席は、3種類に分かれていました。

席立方体のどこにあるか
A8つの頂点
B立方体のちょうど中心
X6つの面それぞれの真ん中

組成を書くとABX3で、AとBとXが1対1対3の割合で並びます。つまりこの名前が決めているのは、どの席がどこにあるかという配置のほうでした。

席が同じなら、座る原子を入れ替えられる

席の配置さえ守れば、そこに座る原子や分子は入れ替えられます。産総研によると、この結晶をつくる物質の組み合わせや比率は数百種類にのぼるそうです。太陽電池では、たとえばヨウ化鉛とヨウ化メチルアンモニウムが材料に使われています。

理研は2017年、この入れ替えをスーパーコンピュータ「京」で一気に試しました。対象はBの席を2種類の原子で分け合う「二重ペロブスカイト」で、席ごとの候補を掛け合わせると11,025通りです。その中から、鉛を使わない候補を51個選び出しています。同じ形を保ったまま中身を探せるのは、名前が形を指しているからです。

同じ形の透明な立方体が3つ並び、中の球の色だけが異なり、それぞれ違う色に光っている
太陽電池としては、塗って作れて軽い

ペロブスカイト太陽電池は、材料を塗ったり印刷したりして作れます。しかも曲げに強く、フィルムを土台にすれば、重さは1平方メートルあたり1kg程度になると期待されています。シリコンの太陽電池の約10分の1です。

ただし寿命の短さと、大きな面積にする難しさが課題です。耐久性についてはNIMSが2024年2月、60℃の中で1,000時間以上発電を続けたと発表しました。そのあいだ、効率は20%以上を保っています。

まとめ
  • ペロブスカイトは、もとは灰チタン石という鉱物の結晶を指していた
  • いまは同じ並び方を持つ結晶材料の総称として使われている
  • 並び方は立方体で、Aが頂点、Bが中心、Xが面の真ん中に座る(ABX3)
  • 席の配置を守れば中身を入れ替えられ、組み合わせは数百種類にのぼる
  • 理研は二重ペロブスカイトの11,025通りを計算し、鉛を使わない候補を51個選んだ
  • 太陽電池としては塗って作れて軽いが、寿命と大面積化が課題

ペロブスカイトという名前が指すのは、立方体の頂点、中心、面の真ん中という3種類の席の並び方でした。席の配置が同じなら座る原子を入れ替えられるので、同じ名前の下に性質の違う材料が数百通り並んでいます。