シリコン量子ビットの同時高精度操作を実現 | 理化学研究所
理研らの国際共同研究チームは、5個のシリコン量子ビットを用い、複数の量子ビットを同時に操作しても高い制御精度を維持できる手法を実証しました。
理化学研究所の国際共同研究チームが2026年10月15日、量子ビット5個を1本の配線で同時に動かす実験を発表しました。
量子ビットは量子コンピューターの計算の単位で、まちがいを直すために最終的に数百万個が必要と考えられています。
配線を共有すれば本数を減らせますが、複数を動かすと精度が落ちることが知られていました。
1本で5個を同時に動かすと、なぜ精度が落ちるのでしょうか。
シリコンの量子ビットと忠実度の意味

量子コンピューターは名前だけ知ってるよ。量子ビットって何なの?

情報を持たせる、いちばん小さな単位よ。
今回は、シリコンの中の電子を量子ビットに使っているの。
電子は小さな磁石のような性質をもっていて、その向きが上向きか下向きかで情報を持たせるのよ。

シリコンって、半導体の材料のシリコンだよね。

そうよ。半導体を作る技術と相性がよくて、たくさん並べるのに向いた候補なの。

忠実度という言葉も使うわね。
量子ビットの操作が、狙いどおりにどれだけできたかを表す数なの。
100%なら、完全に理想どおりよ。

テストの点数みたいだね。
1本の配線で5個を動かすと影響し合う

大きな計算では、いくつもの量子ビットを同時に動かさないといけないの。
それに、量子コンピューターは誤り訂正のために、最終的に数百万個の量子ビットが必要と考えられているのよ。

誤り訂正って何?

計算の途中で起きたまちがいを直しながら、続ける仕組みよ。
そのために、量子ビットをたくさん使うの。

そこで、1本の配線にあたる電極から高周波の信号を送って、何個かをまとめて動かす方法があるの。
これなら本数を減らせるわ。

本数が減るなら、いいことずくめだね。

そうでもないの。
複数を動かすと、動かすつもりのない量子ビットにも影響が出てしまうの。
高周波の信号が別の量子ビットの反応をずらす

ラジオを局に合わせるのと似ていて、量子ビットにもそれぞれ反応しやすい周波数があるの。
ちがう周波数の信号が届くと、それが変わってしまうのよ。

動かしたい量子ビットのためなのに、ほかの量子ビットまで変わるんだ。

そうなの。反応しやすい周波数がずれると、量子ビットの進み具合がずれていくわ。
電子が逆を向くわけではなく、タイミングがずれるの。
専門的には位相の誤りと呼ぶの。
これが忠実度の下がる主な原因だったのよ。

タイミングがずれるって、ピンとこないな。

時計がじわじわ進んだり遅れたりするのと、似ているわ。
ただ、時計の針のように目に見えるものではないの。
別の量子ビットへの影響を2個ずつ測って打ち消す

チームは、量子ビットを2個ずつの組にして、片方を動かしたときのもう片方への影響を測り、打ち消す補正を加えたの。
信号の形も工夫して、余計な周波数の成分を減らしたのよ。

5個だと組がたくさんできるよね。補正は大変にならないの?

3個以上のときは、測ったずれを足すだけで補正の値が求まるの。
だから組が増えても手順が膨らみにくいと、理研は説明しているわ。

5個同時の操作でも忠実度は約99.9%

補正と信号の工夫を合わせると、3個までの同時操作でも、各量子ビットで99.99%を超えたの。
5個すべてをいっしょに動かすと、約99.9%だったわ。

5個だと、99.99%からは下がるんだね。

そうなの。理研の補足説明によると、誤り訂正を含む量子コンピューターの実現には、忠実度99%以上が必要なのよ。
5個の約99.9%は、その値を上回っているわ。
ただ、これは1個ずつへの操作の精度で、必要な条件のひとつなの。

量子コンピューターの数百万個と今回の5個

数百万個と比べると、5個はまだ少ないね。

そうね。今回は5個での実験よ。
理研の発表は、より小さい電力で速く動かせる別のデバイス技術との組み合わせにも触れているわ。

組み合わせれば、同時に動かせる数を増やしつつ忠実度もさらに高められる、という内容よ。
その先に、量子コンピューターの頭脳にあたる大規模なシリコンの部品の実現につながることが期待される、と書いているわ。
まとめ
- 理研の国際共同研究チームは2026年10月15日、量子ビット5個を1本の電極から同時に動かす実験を発表した
- 原因は、別の量子ビットに届いた信号が反応のしやすさをずらすことだった
- ずれの補正と信号の工夫を合わせ、5個同時でも約99.9%の忠実度を保った
別の量子ビットの反応がずれ、進み具合の誤りになります。ずれを組ごとに測って足す方法なら、量子ビットが増えても手順が膨らみにくい点が、この研究の要点です。
この記事の内容は、理化学研究所の2026年10月15日付の発表によります。
原論文はNature Physicsに掲載されました。

