新着情報: AIの「おすすめ」が直前の情報に偏る現象を解明~ネット通販や動画配信における推薦技術の改良方針として期待~(情報科学研究院 教授 長谷山美紀)
2026年10月9日 ポイント ●利用者が直前に見た商品などに推薦AIが強く依存する現象を、九つの実社会データで確認。●AI内部で情報を保持する構造に着目し、直前の1件に依存する要因を解明。●履歴に表...
動画や通販のアプリを開くと、次に見る物の「おすすめ」が並びます。選んでいるのは推薦AIで、見た物や買った物の履歴から次を当てています。
北海道大学の研究グループは2026年10月9日、研究でよく使われる推薦AIが、さっき見た1件に偏るわけを発表しました。
履歴を全部読んでいるはずなのに、なぜ直前の1件に引っぱられるのでしょうか。
推薦AIはどう次を当てるのか

いまの主流は、文章を書く生成AIの多くと同じ作り(トランスフォーマー)を使う推薦AIなんだ。中では履歴を1件ずつ数字の列に置き換えて、見た順に箱へ入れていくよ。
この箱を、ここでは欄って呼ぶね。

へえ、数字の列にしてから入れるんだ。

そう。しかも、その欄どうしがつながってるんだ。行列に並んだ人にたとえると、どの人も、自分と前の人の話だけが聞こえる並びだよ。
ただ、実際に並んでるのは人じゃなくて、数字の列だけどね。

聞こえた話をどのくらい参考にするかの強さを、重みって呼ぶよ。関係が強い欄ほど、多く取り込むんだ。この仕組みが自己注意だよ。

次を当てるときに使うのは、いちばん後ろの欄にたまったものだけなんだ。

後ろの欄も前の欄から情報を集めてるなら、履歴全体が生かされそうじゃない?

推薦AIはさっき見た1件を入れ替えると当たりが減る

ところが、こうした推薦AIの予測は、さっき見た1件に偏りすぎると指摘されてたんだ。頼り方の強さを測ったのは、長谷山美紀教授(北海道大学大学院情報科学研究院)らの研究グループだよ。

材料は実社会のデータ9つと、代表的な推薦AIの5つなんだ。

代表格のSASRecでは、履歴の末尾に来る1件、つまりさっき見た物はそのままにして、それより前の順番だけ入れ替えたんだ。すると多くのデータで、当たり具合はあまり変わらなかったよ。

前の順番は変えても平気なんだ。じゃあ、さっき見た1件まで入れ替えたら?

末尾の物まで入れ替えて別の物に変わると、大きく下がったんだ。
さっき見た1件が予測を強く左右して、それより前の履歴は十分に生かされていない可能性があるよ。

しりとりみたいに、直前の1語だけで次が決まる感じか。

近いね。ただ、しりとりは次の頭文字が直前の1語だけで決まるでしょ。推薦AIは前の履歴も読んでいるはずなのに、結果はさっき見た1件に引っぱられるんだ。

前の欄をどれだけ参考にするかの重みを見れば、さっき見た1件だけ飛び抜けて大きいんでしょ。

それが、重みを調べても、並びの位置によってなだらかに変わる傾向があるだけだったんだ。
さっき見た1件だけが飛び抜けてはいないから、重みを見るこれまでの分析では、この差を説明できなかったんだよ。
残差接続は自分の情報を足し戻す配線

そこで研究グループが目を付けたのが残差接続。自己注意などを通した結果に、通す前の中身をそのまま足し合わせる仕組みなんだ。

なんで、わざわざ足し戻すの?

推薦AIの中では同じ作りの処理を何段も重ねていて、その1段を層って呼ぶんだ。残差接続があると、段を深く重ねても学習が安定しやすくなるから、広く使われてきたんだよ。
中身を詳しく調べたSASRecとDuoRecでも、自己注意とセットで各層に組み込まれてる。

たとえるなら、各欄は自分のメモを持っていて、自己注意で前の欄から要点を書き写して新しい紙にまとめるんだ。残差接続は、そこに元の分をそのまま重ねる仕組みだよ。

それなら、2枚とも読めば困らないんじゃない?

紙ならそうだね。でも足すと混ざって1つになって、大きいほうの影響が強く残るんだ。
ほかの欄から集めた分は残差接続で12〜40%に下がる

北大のチームはSASRecとDuoRecを使って、各欄の中身のうち、ほかの欄から集めた分が占める割合を測ったんだ。量は、列が全体として持つ大きさで比べてるよ。

自己注意で集めた分は、どのくらい残るの?

自己注意を通した直後で比べると、集めた分は72〜96%と高い値だった。ところが残差接続で元の分を足すと、12〜40%まで大きく下がるんだ。

えっ、そんなに下がるんだ。

つまり足した後は、半分以上がもとから持っていた分で占められるんだ。さっきのメモなら、集めた要点の上に、元のメモが濃く重なった状態だね。

後ろの欄だけで当てるからさっき見た1件が勝つ

推薦AIが次を当てる材料は、いちばん後ろの欄だけだったよね。その欄に元から入っているのは、さっき見た1件の情報なんだ。

あ、足し戻される元の分が、さっき見た1件の情報なのか。

そう。前の件から集めた分も入ってはいるけど、残差接続が足し戻す分に比べると薄くなる。だから予測は、さっき見た1件に引っぱられるんだ。

行列の一番後ろの人が、代表で答えるのに近いかな。前の人の話も聞いてるけど、自分の元の考えのほうが強く残るんだ。
ただ、これもたとえで、実際は足し算だよ。

チームは、後ろの欄だけで当てる作りと残差接続の足し戻しが重なることで、偏りが説明できるとしてるよ。
残差接続を弱めるとさっき見た1件への偏りが減る

チームは、学び終えた推薦AIを学び直させずに、推薦するときだけ残差接続の強さを係数で変えたんだ。標準を1として、すべての層とすべての欄で弱めると、集めた分が増えて、偏りは小さくなったよ。

元の分の音量つまみを下げて、ほかの欄から集めた分を聞こえやすくした、というイメージだね。ただ、実際は数字に係数をかけているだけだよ。

偏りが減ったなら、当たり具合もよくなったんじゃないかな。

それが、弱めるほど、平均の当たり具合は下がったんだ。
さっき見た1件を重く見ることが、当たり具合を支えている面もあるんだよ。

それでも、いちばん後ろの欄で外していた予測の一部は、弱めることで直せたよ。
ただ、今回調べたのは、9つのデータを学ばせた研究用の推薦AIなんだ。実際に動いているサービスのおすすめそのものは調べてないよ。

なるほど、研究用の推薦AIでの結果なんだね。
まとめ
- 推薦AIは、いちばん後ろの欄の中身だけで次を当てる
- SASRecは多くのデータで、さっき見た1件が別の物に変わると当たり具合が大きく下がった
- ほかの欄から集めた分の割合は、残差接続を足すと12〜40%に下がった(足す前は72〜96%)
- 残差接続を弱めると偏りは減るが、平均の当たり具合も下がる
- 対象は9つのデータを学ばせた研究用の推薦AIで、実際のサービスのおすすめではない
自己注意の重みだけを見ても、さっき見た1件の飛び抜けた強さは見えませんでした。
その強さは、足し戻した後で中身の大きさを比べて、初めて見えたのです。
集めた分を薄めていた主な要因は、注意の向け方ではなく残差接続という足し算の配線でした。
この記事の内容は、北海道大学が2026年10月9日に公開したプレスリリースによります。
成果は国際会議RecSys 2026で発表されました。調べた9つの名前はプロジェクトページで確かめました。

