スマホから突然、緊急地震速報の音が鳴ることがあります。
大阪では5月、その音から始まる防災訓練が開かれました。演劇の手法を使い、商業施設で緊急地震速報が流れた場面で、次の行動を参加者に考えさせる訓練です。では、緊急地震速報はなぜ揺れより先に届くのでしょうか。そして、なぜ間に合わないことがあるのでしょうか。

速いP波を捉えて、遅いS波が来る前に知らせる

気象庁によると、地震の波には主に2種類あります。秒速約7kmで進むP波と、秒速約4kmと遅いものの揺れの強いS波です。気象庁は、震源の近くでP波を捉えた地震計のデータから、地震の起きた場所や規模、各地の揺れの強さを計算します。観測点は、気象庁の地震計と震度計が約690か所、防災科学技術研究所の観測網が約1,000か所です。

一方、情報を伝える有線や無線の電気信号は、原理的には光の速さ(秒速約30万km)で伝わります。つまり地震計から先に知らせを走らせれば、離れた町には強い揺れより早く届くのです。

地下の震源から速い波と遅い波が広がり、地上では地震計の小屋から遠くの街へ光の線が先に届く様子
警報が2か所以上の観測点を待つのは、落雷などの誤報を防ぐため

一般向けの緊急地震速報(警報)を出す条件は、気象庁の発表条件に定められています。2か所以上の観測点で地震波を捉え、最大震度5弱以上などが予想されたときに出します。そして2か所以上とする理由は、地震計のすぐ近くへの落雷などによる誤報を避けるためです。

警報の対象には、震度4が予想される地域も入ります。震度4の地域まで含める理由の一つは、予想した震度に±1程度の誤差があり、実際には5弱になるおそれがあることです。

震源に近い場所には、速報が原理的に間に合わない

気象庁によると、緊急地震速報から強い揺れまでの時間は、数秒から長くても数十秒程度です。しかも解析や伝達に数秒かかります。そのため内陸の浅い場所で起きた地震などでは、震源に近い場所への緊急地震速報は原理的に間に合いません。

海で起きた2011年の東北地方太平洋沖地震でも、警報から強い揺れまでの時間は、地点によって大きく違いました。

地点(2011年3月11日)警報から強い揺れまで
宮城県石巻市2秒
宮城県栗原市15秒
福島県浪江町16秒

秒数は気象庁の資料によります(小数点以下は切り捨て)。その後、海の地震には海底の地震計も使われるようになりました。気象庁は2019年に海底地震計の活用を広げた際、日本海溝付近の地震では警報が最大25秒程度早まる見込みを示しました。

震源に近い家はすでに揺れ、離れた家には揺れより先に光の線が届いている様子
人が大勢いる施設では、出口へ走らず係員の指示に従う

訓練の設定のように、人が大勢集まる商業施設では、どう動けばよいのでしょうか。気象庁は、施設の係員の指示に従い、あわてて出口に走り出さないよう求めています。また気象庁が載せている緊急地震速報の利用の心得では、係員などから明確な指示がないときの行動も示しています。その場で頭を守って身構え、吊り下がった照明などの下から離れることが基本です。

心得は、これらの行動をあくまで一つの例と位置づけています。学校や職場で緊急地震速報を受け取ったときの行動も、家庭での指針を基に自ら考えておくことが重要だという立場です。

まとめ
  • 地震の波は、速いP波(秒速約7km)と、遅いが強いS波(秒速約4km)に分かれる
  • 緊急地震速報は、P波を捉えて計算し、原理的には光の速さで伝わる電気信号で知らせる
  • 警報は2か所以上の観測点で捉えてから出す。落雷などによる誤報を防ぐため
  • 解析や伝達に数秒かかるので、震源に近い場所には原理的に間に合わない
  • 人が大勢いる施設では、出口へ走らず係員の指示に従う。明確な指示がなければ、その場で頭を守って身構える

緊急地震速報の猶予を生んでいるのは、地震波と電気信号の伝わる速さの差です。ただし解析と伝達には数秒かかります。その数秒のうちに強い揺れが届いてしまう場所では、速報は原理的に間に合いません。

訓練の話は、読売新聞オンラインが2026年10月5日に報じた没入型の防災訓練の記事によります。速報の仕組みと数字は、2026年10月時点の気象庁の解説ページと資料から取りました。