スペースXが「スターシップ」第14回飛行試験を実施 初の地球周回飛行とスターリンク衛星の軌道投入に成功

SpaceXの再使用型ロケット「Starship」が第14回飛行試験で初の地球周回軌道への投入に成功。第3世代のStarlink衛星26機を放出し、衛星との通信も確認しました。上昇中にはエンジン1基が停止したため、宇宙船は予定を短縮して北太平洋に着水しました

宇宙まで届いたロケットが、そのまま地球を回り続けるとは限りません。横向きの速さが足りなければ、やがて地上へ落ちてきます。
スペースXの大型ロケットスターシップは、2023年から13回飛びましたが、13回とも地球を回る軌道には入っていません。ところが9月28日の14回目で、初めて軌道に入りました。その直前、機体はいったん、何もしなくても大気に戻ってくる道に乗っています。軌道に入る前に、なぜその道を通ったのでしょうか。

この記事の事実と数値はsoraeが2026年9月29日に報じた記事と、スペースXの第14回飛行の公式ページによります。過去の飛行の回数と飛行時間の短縮は、ロイターの報道から取りました。

スターシップの宇宙船には、海面用と真空用のエンジンがある

スターシップは、下の大型ブースターと、上に載る宇宙船の2段で飛びます。宇宙船にはエンジン「ラプター」が6基あり、そのうち3基が海面用です。残りは空気のない宇宙で使うための真空用です。

今回は上昇の途中で、真空用の1基が早めに止まりました。スターシップは残る5基を長めに燃やし、失った推力を補っています。その結果、予定していた弾道の軌道に入りました。

地平線から宇宙へ昇り、弧を描いて遠くの海へ降りていく光の軌跡
スターシップは、再点火できなくても大気に戻る道にまず乗った

スペースXは、この弾道の軌道をpassively safe(何もしなくても安全)と書いています。この先の噴射ができなくても、大気に戻ってくる道を指す言葉です。

その道の上で、飛行管制チームは機体の状態を調べました。そのうえで、この先の噴射に使う海面用のラプター3基が正常と判断しています。そして周回に進む許可を出しました。

宇宙船は海面用の1基を点火し直し、地球を回る軌道へ

そこでスターシップは海面用の1基をもう一度点火し、軌道に入るための噴射を行いました。soraeがライブ配信から読み取った値では、噴射は約14秒で、高度は約276kmです。

一方、軌道に入った機体を狙った時刻と場所で大気に戻すには、自分でブレーキをかける必要があります。そのブレーキの噴射も、海面用のラプターで行います。つまり軌道に入る前に確かめたのは、軌道への投入にも帰りのブレーキにも使うエンジンでした。

飛行の段階宇宙船が使ったラプター
上昇6基(真空用1基が早く止まり、残る5基を長く燃やした)
軌道への投入海面用1基
軌道からの離脱海面用1基
着水の直前海面用3基
宇宙船は衛星26機を放出し、初めての軌道離脱で帰ってきた

軌道に入ったスターシップは、スターリンクの第3世代衛星26機をすべて放出しました。スペースXによると、レーザー通信や地上局を通じて全機と交信できています。

しかし上昇中のエンジン停止を受け、管制チームは周回の時間を短くすると決めました。宇宙船は海面用の1基で、スターシップとして初めての軌道離脱噴射を行っています。再突入したあと、3基を点火して向きを立て直し、北太平洋の狙った地点に着水しました。

約10時間の計画だった飛行は、ロイターによると3時間に縮まりました。着水したのは、打ち上げ前に船や航空機を締め出しておいた2つの海域のうちの1つです。

地球の上空で、ステンレスの宇宙船が1基のエンジンを噴射しているイメージ
まとめ
  • スターシップは14回目の飛行で、初めて地球を回る軌道に入った
  • 上昇中に宇宙船の真空用ラプター1基が止まり、残る5基を長く燃やして補った
  • まずエンジンが動かなくても大気に戻る弾道の軌道に乗った
  • そこで海面用ラプター3基が正常と確かめ、1基の再点火で軌道に入った
  • スターリンクの第3世代衛星26機をすべて放出した
  • 軌道にいる時間を短くし、海面用1基で初めての軌道離脱噴射を行って北太平洋に着水した

管制が海面用ラプターを1基ではなく3基すべて見たのは、この先の噴射に3基とも要るからでした。軌道への投入と軌道からの離脱は1基ずつですが、着水の直前には3基すべてを点火して向きを立て直しています。