「レアアース」で作った「世界一正確な時計」 - ナゾロジー
朝、目覚まし時計と腕時計の針がわずかに食い違っていたので、とりあえず早いほうを信じて家を飛び出しました。 私たちの暮らしは、「1秒」という単位を当たり前のようにあてにして回っています。 その1秒を決めているのが、原子の振る舞いを目印にする「原子時計」です。 シンガポール国立大学(NUS)量子技術センター(CQT)の研究…
スマホの時計は、ネットにつながると自動で時刻が合います。その時刻をたどると、原子がぴたりと反応する光や電波の振動を数えて1秒を決める原子時計に行き着きます。
いま、その1秒の決め方を、もっと正確な光時計に替える検討が進んでいるところです。シンガポール国立大学のチームは9月、同じ光時計を2台作り、並べて比べた結果を論文で発表しました。すでに十分正確な時計を、なぜわざわざ2台で比べるのでしょうか。
この記事の数値は、2026年9月23日にNatureに載ったシンガポール国立大学の論文によります。
光時計のずれの小ささは、多くの場合まだ見積もりの値
時計の進み方は、温度や磁場などのわずかな影響でずれてしまうものです。そこで研究者は、ずれの原因を1つずつ調べ、残る誤差の幅を見積もります。いくつかの光時計は、この幅が10のマイナス18乗(100京分の1)より小さいと報告しています。
ただし論文によると、同じ種類の時計どうしで、その幅を確かめた例はまだ多くありません。さらに種類の違う時計どうしを比べると、見積もりと合わない結果も出ています。
同じ時計を2台並べ、見積もりどおりに一致するかを試した
論文は、この見積もりを「確かめられる予言」として扱っています。見積もりが正しければ、同じ種類の時計2台は、その範囲の中で一致するはずだからです。
また、10のマイナス18乗より下を確かめるには、2台を同じ場所に置く必要があります。重力の影響で、時計の進みは置いた場所の高さで変わるからです。遠く離れた場所どうしの高さの差は、知られている精度が数センチ分にとどまります。

ルテチウムのイオン1個ずつで、光時計を2台つくった
チームは、電気を帯びたルテチウム176の原子(イオン)を1個ずつ、別々の装置に閉じ込めました。そして2台に同じレーザーを当て、レーザー自体の揺らぎを打ち消しながら比べています。2台の光時計を比べた時間は、12.4日の間の合計200時間です。
| 項目 | 論文の値 |
|---|---|
| 1台ずつの見積もった誤差の幅 | 約1×10のマイナス19乗(これまで最小の報告の4分の1) |
| 2台の差 | ほぼゼロ(マイナス0.1×10のマイナス19乗) |
| その差の誤差の幅 | 測定のばらつきでプラスマイナス5.7、補正の見積もりでプラスマイナス1.0(どちらも×10のマイナス19乗) |
つまり2台の差は、誤差の幅の中に収まりました。確かめられたのは5.7×10のマイナス19乗の細かさまでで、比べる測定の精度で頭打ちになりました。論文の集計では、見積もりが10のマイナス18乗より小さく、同じ種類の比較まで済ませた例は、この研究が初めてです。
ルテチウムは、熱の放射にも磁場にも乱されにくい
論文によると、ルテチウムの時計が目印にする光は、確立した時計の中で、熱の放射と磁場の影響をいちばん受けにくいものです。原子が重いので、動きによるずれも小さく抑えられます。
また、時計に使う上の状態は約1週間も続くので、1回の測定を長く取れます。冷却や時計に使う光も、市販のレーザーで出せるものです。装置は室温で動き、磁場を防ぐ覆いもありません。

まとめ
- 光時計の正確さは、ずれの原因を調べて見積もった値で示される
- 論文は、同じ種類の2台が見積もりの範囲で一致するかで、その値を確かめた
- 離れた場所の高さの差は数センチ分しか分からないので、2台は同じ場所で比べた
- ルテチウムのイオン1個ずつの光時計2台の差は、誤差の幅に収まった
- ルテチウムは熱の放射と磁場の影響を受けにくく、室温の簡単な装置で動く
論文によると、ここまで正確になると、離れた2台の光時計を比べる意味が変わります。時計の確認ではなく、2つの場所の高さの差を直接測ることになるのです。その感度は、これまでの測量では届かないミリメートル単位の高さの違いに届くとしています。


