「塾代を払うよりChatGPTやGeminiを使って」と保護者に勧め、塾が教室を閉鎖へ - GIGAZINE
子どもの成績を伸ばそうと塾に通わせている保護者に、塾の運営会社自身がChatGPTやGeminiの利用を勧めるという異例の事態が起きました。
わからない宿題をAIに聞くと、数秒で解き方が返ってきます。では、AIに家庭教師を任せたら、人に教わるのと同じくらい力が伸びるのでしょうか。
オーストラリアでは9月、ある塾が閉鎖を決め、保護者にAIを使うよう勧めました。同じ月、AI家庭教師と人の家庭教師を2,383人で比べた研究が公開されています。数学では、AIの返事の速さ、生徒の発言、正しく解けた練習、点の伸びが順につながっていました。
塾の閉鎖はGIGAZINEが2026年9月28日に報じた記事によります。研究の数値は、2026年9月23日に公開されたStudentBenchのプレプリントから取りました。
Dymocksの塾は、AIで学べるとして教室を閉じた
閉じたのは、シドニーで塾を運営するDymocks Educationの2つの事業です。同社のCEOは現地紙の取材に、塾で教える中身の多くは繰り返しの演習だと語っています。
しかしシドニー大学の研究者は、生徒がAIから答えだけを急いで引き出す弱点を挙げました。では、AIと練習すると、自分で解ける力は本当に伸びるのでしょうか。
StudentBenchは、1時間の個別指導の前後でテストの点を比べた
その問いに近いのが、論文のプレプリント「StudentBench」です。米国の大学院入試GREを使い、主に18〜23歳の学生2,383人のデータを分析しました。
まず27問の事前テストを受け、間違えた問題を約5分見直します。次の1時間は、AI家庭教師、人の家庭教師、GREと関係のない動画のどれかに割り当てました。最後に、別の問題で事後テストを受けます。

AI家庭教師は、事前テストの間違いから1時間を組み立てた
AI家庭教師には13種類のAIを使い、与えた指示文は2つだけです。渡したのは、生徒が事前テストで間違えた設問でした。AIはそこから教える中身を決め、1時間の計画を立てています。
さらに練習問題と、その答えもAIが自分で作りました。ただし、事後テストの中身は一度も見せていません。
数学では、返事の速さ、発言、正しく解けた練習、伸びが順につながった
13種類をまとめると、AI家庭教師の伸びは人の家庭教師と統計で「同等」でした。差が、前もって決めた幅に収まったという意味です。分野別では、数学で同等といえ、言語ではいえませんでした。
AI家庭教師の返事にかかる時間は、種類ごとの中央値で1.9秒から31.0秒です。そして返事が速いAIほど、生徒の発言の数が多い傾向でした。数学の1,137回の授業では、そのつながりが次のように続きます。
| つながり | 数学の授業で見えた向き |
|---|---|
| AIの返事の速さと、生徒の発言の数 | 速いほど多い |
| 生徒の発言の数と、正しく解けた練習問題の数 | 多いほど多い |
| 正しく解けた練習問題の数と、事前から事後への伸び | 多いほど大きい |
論文は、教え方の評価が低いAIでも人並みに伸びたのは、この速さと練習のためかもしれないと考えています。ただし、これはつながりで、原因は確かめていません。言語の授業では、このつながりははっきりしませんでした。また、問題集を1人で解くだけの人たちとは比べていません。さらに、測ったのは1時間直後の伸びで、数か月後まで残るかは調べていません。

StudentBenchは、伸びをAIなしの事後テストで測った
論文が引く数学の先行研究では、制限なしにAIの助けを使うと、練習の成績は上がりました。ところがAIなしのテストでは、成績が下がっています。
そのためStudentBenchは、事後テストをAI家庭教師なしで受けさせました。伸びとして数えたのは、AIが手を離したあとに自分で解けた分だけです。
また論文は、会話の中身も6つの決まりで数えました。たとえば、AIの最初の5通のうちに生徒に解かせようとしたか、理由の説明を求めたかです。結果は、AIの系統ごとにまとまりました。ただし、この6つで点の伸びを予測できるかは、まだ確かめていません。
まとめ
- AI家庭教師は事前テストの間違いから計画を立て、練習問題と答えも作った
- 13種類をまとめた伸びは人の家庭教師と同等で、分野別では数学だけが同等といえた
- 数学では、返事の速さ、発言、正しく解けた練習、伸びが順につながる傾向だった
- これはつながりで、問題集を1人で解く人たちとは比べていない。測ったのは直後の伸びだけ
- 事後テストはAIなしで、自分で解けた分だけを伸びとして数えた
論文が「正しく解けた練習」と数えたのは、答えの決まった問題を1回目で正解した数です。生徒は答える前にAIに相談することもできました。その正誤もAI家庭教師が作った答えで判定しています。生徒はその答えに異議を出すボタンを押すことができました。押された割合が最も高いAIでは、数学の練習問題の約11%でした。異議は生徒が納得しなかった記録で、誤りと確かめた数ではありません。

