着るペルチェ水冷クーラーChillerX Pro試着レビュー 1.6倍冷える巨大ヒートシンクと吸排気ダクトでガンダム感、静音化は朗報 | テクノエッジ TechnoEdge
シフトールが発表したウェアラブルクーラーのプロ仕様モデル「ChillerX Pro」、さっそく試着してきたファーストインプレッションをお伝えします。
暑い日に、扇風機の付いた作業着を着て働く人を見かけたことはありませんか。2026年6月2日、日本の会社Shiftallが「ChillerX Pro」を発表しました。こちらは風ではなく、冷たい水を服の中に回して体を冷やすベストです。
発表では、気温45℃の環境でも、体に当たる水冷シートの表面は15℃まで下がります。しかも装置の中には、パソコンの冷却に使うのと同じ種類の部品が入っています。扇風機の付いた服と何が違い、なぜ人を冷やす服にパソコンの部品が要るのでしょうか。
そもそも冷却とは、熱を別の場所へ運ぶこと
物を冷やすとき、冷たさを外から足しているわけではありません。冷却とは、そこにある熱を別の場所へ移すことです。たとえるなら、部屋にたまった水をバケツでくみ出して、外へ捨てるようなものです。
エアコンも冷蔵庫も、この考え方で動いています。たとえばエアコンの室外機から温かい風が出てくるのは、部屋から運んできた熱を外に捨てているからです。つまり人を冷やす服でも、体の熱をどこへ運び、どこで捨てるかが冷却の中身です。
扇風機の服は汗を乾かし、ChillerX Proは水で熱を運ぶ
扇風機の付いた作業着は、服の中に風を送ります。汗は蒸発するときに体から熱を奪うので、風はその蒸発を助けることで体を冷やす仕組みです。
一方、ChillerX Proの冷却では、熱の運び手に水を使います。冷やした水を、背中や脇に当たる水冷シートの中へ流し続ける仕組みです。体の熱は水に移り、温まった水は管を通って、背中側に着けた装置へ戻ります。そこで水がまた冷やされ、ふたたびシートへ送り出されるという循環です。
発表では、電気で冷やした金属を肌に直接当てる方式と比べています。その方式で冷えるのは、金属が当たった「点」だけだといいます。これに対して、水を回す水冷シートは上半身を広い「面」で冷やす作りです。冒頭の15℃は、この水冷シートの表面の温度です。Shiftallは、サウナにある水風呂と同じくらいの温度だと例えています。
パソコンの冷却部品が入っているのは、熱い側の熱を捨てるため
ChillerX Proの中で水を冷やしているのは、ペルチェ素子です。ペルチェ素子は薄い板の形をしていて、電気を流すと片面が冷たくなり、もう片面が熱くなります。たとえるなら、熱を片側から反対側へくみ上げる、小さなポンプのようなものです。
ChillerX Proは、ペルチェ素子の冷たい面で水を冷やします。ただし、冷たい面だけを使いたくても、反対の面には必ず熱が出ます。だから冷たい側を使い続けるには、熱い側の熱をどこかへ逃がさなければなりません。
熱くなるところから熱を運び出して捨てるのは、パソコンの中でも毎日欠かせない仕事です。パソコンの頭脳にあたる部品は、計算すると熱くなります。その熱を逃がす道具としてよく使われるのが、ヒートパイプとファンです。
ヒートパイプとは、熱をすばやく運ぶための金属の管です。中の少しの液体は、熱い端で蒸発するときに熱を受け取ります。汗が蒸発するときに体から熱を奪うのと同じです。そして冷たい端で液体に戻るときに、その熱を手放します。このくり返しで熱を運ぶ仕組みです。管の先には薄い板をたくさん並べた「金属のひれ」が付いていて、運ばれた熱はここから空気へ移ります。
ChillerX Proにも、このヒートパイプとファンが入っています。熱い側の熱を運び出して捨てるという仕事が同じなので、同じ道具が使えるわけです。ファンには、サーバー(休まず動き続ける業務用のコンピューター)などで使われる大風量の種類が選ばれています。Shiftallの説明では、熱い側の熱を運ぶ力を高めるため、熱を外へ捨てる部分にヒートパイプを使いました。送風の仕組みも新しくしたといいます。その結果、前のモデル(2025年夏発売のChillerX)より冷却の性能が上がったと発表しています。

体の熱が水から空気へ受け渡される道すじ
ここまでの話を、熱の動きで並べ直してみましょう。まず体の熱は、水冷シートの中を流れる水に移ります。次に水の熱をペルチェ素子が熱い側へくみ上げ、ヒートパイプがひれへ運びます。そして最後にファンが風を当てて、その熱を外の空気へ捨てるという順番です。
熱を運ぶには、電気の力が要ります。ChillerX Proは、USB端子に60Wの電気を送れる電池や電源をつないで動かします。服の中の涼しさは、熱を運ぶために使った電力と引きかえに手に入れているものなのです。
捨てた熱が、背中に戻らないように
熱を外へ捨てるなら、捨てる向きも大事になります。Shiftallによると、前のモデルは、装置の背面(体に触れる面の反対側)から空気を吸い、上下へ吐き出す作りでした。テクノエッジの試着レビューは、体型や着け方によっては熱い排気が背中を伝う問題があったと書いています。
そこでProは、底から吸って、角度を付けた通り道で斜め上へ吐き出す形に変えました。排熱が体のそばを通ると、せっかく冷やした体がまた熱を感じてしまうからです。運んだ熱の出口の向きまで、作り直していました。
まとめ
- 冷却とは、熱を別の場所へ運ぶこと。エアコンも冷蔵庫も同じ考え方で動いている
- 扇風機の付いた服は風で汗の蒸発を助け、ChillerX Proは冷たい水で体の熱を受け取って運ぶ
- 水を冷やすペルチェ素子は、熱い側の熱を捨てないと使い続けられない
- 熱を運んで捨てる仕事はパソコンと同じなので、ヒートパイプとファンが入っている
- 熱を運ぶには電気が要る。ChillerX Proは60Wの電気を送れる電源で動かし、捨てる熱は体から離れた斜め上へ出す
ChillerX Proの冷却は、体の熱を水で受け取り、ペルチェ素子とヒートパイプで運び、送風で外へ捨てる流れです。人を冷やす服も、熱をどこへ運んでどこで捨てるかという点では、コンピューターの冷却と同じ考え方の上に作られた道具です。
この記事の製品の説明と数値は、Shiftallの公式発表(2026年6月2日)によります。前のモデルの排気の問題と装置を着ける位置は、テクノエッジの試着レビュー(2026年6月2日)によります。

