Reconstructing the aqueous environment of the Ryugu parent body through the speciation of multiple elements | Nature Communications
Analysis of the elemental species composition of returned samples from the C-type asteroid Ryugu indicates that Ryugu’s aqueous environment was highly reducing …
海水を鍋で煮詰めると、水がなくなったあとに白い塩が残ります。
ところが、小惑星リュウグウの砂は、塩水だったと考えられてきた水の跡があるのに、塩がほとんど見つかっていません。
探査機はやぶさ2が持ち帰った砂を、東京大学と金沢大学が中心の研究グループが分析し、2026年10月16日に発表しました。
塩水だったはずのリュウグウの砂から、なぜ塩の結晶がほとんど出てこないのでしょうか。
リュウグウの砂には水と反応した跡がある

まず、砂の出どころからだよ。探査機はやぶさ2が持ち帰った砂で、砂の入ったカプセルは2020年12月6日にオーストラリアで回収されたんだ。
リュウグウは、大きな天体が壊れて、そのかけらが集まってできたと考えられてるよ。

へえ、かけらが集まってできたんだ。

もとの天体には氷があって、放射性の物質が出す熱でとけて水になったと考えられてるよ。
その水と岩が反応してできた主な鉱物が粘土鉱物だよ。

粘土鉱物は、ごく薄い層が何枚も重なった鉱物で、トランプの束に近いよ。
ただ、似ているのは重なり方だけだね。

水と岩が反応した跡が、その粘土鉱物ってことか。

これまでの研究では、この水はナトリウムと塩素を多く含む塩水だったと考えられてきたんだ。
この2つは、結びつくと食塩になる、塩のもとだよ。

てっきり、塩水の跡なら砂に塩がたっぷり残ってると思ってた。

ところが、砂からは食塩と同じ成分の塩の塊が、ほとんど見つかってないんだ。
電子顕微鏡で、ごく小さな塩の結晶が少し見つかった例があるだけなんだよ。
塩素の居場所は特別に明るいX線で見分けた

塩素は、砂の中に少ししかないんだ。
電子顕微鏡で調べても、大部分の居場所は分からなかったよ。

そこで使われたのが放射光だよ。
光の速さ近くまで加速した電子を磁石で曲げたときに出る、とても明るいX線なんだ。

放射光って、放射性の物質と関係あるの?

関係ないよ。電子を曲げたときに出る光だから、放射性の物質は使ってないんだ。

このX線を砂に当てて、エネルギーを少しずつ変えていくんだ。
横にそのエネルギー、縦に塩素がX線を吸い込んだ量をとると、グラフに山と谷が現れるよ。
塩素がくっついている相手によって、山と谷の並び方が変わるんだよ。

並び方を見れば、塩素がくっついてる相手が分かるってこと?

そう。正体の分かっている物のグラフを手本に並べれば、どれに近いかを見分けられるんだ。
指紋の照合に似てるね。ただ、指紋と違って、何種類かの物が混ざることもあるよ。
リュウグウの塩素は約9割が粘土鉱物の中

砂のグラフには、塩に特有の山がなかったんだ。
塩素を含む粘土鉱物の手本と、よく似た形をしてたよ。

手本を混ぜ合わせて、砂のグラフに最も近くなる割合を探したんだ。
すると、塩素の約9割は粘土鉱物の中で、残りの1割ほどはおそらく塩だったよ。

へえ、塩じゃない形で隠れてたんだね。

粘土鉱物にもとから入っている、酸素と水素が1個ずつ結びついた粒のいくつかが、塩素と入れ替わってたんだ。


ナトリウムは大部分が、別の種類の粘土鉱物にくっついてたんだ。
この粘土鉱物は、層と層のすき間に、プラスの電気を帯びた小さな粒を抱え込めるんだよ。
こういう電気を帯びた粒を、イオンと呼ぶよ。

塩の形のナトリウムは、どれくらい残ってるの?

ナトリウムのうち、塩になっている分は1割未満なんだ。
水の濃さは海水の約100分の1と見積もられた

塩のもとが粘土鉱物の側にあるなら、水に溶けていた量は少なかったと考えられるんだ。
水に溶けたイオンと、すき間にあるイオンは、入れ替わりながら釣り合ってるよ。

天びんの両側が釣り合う関係に似てるね。ただ、両側が同じ量になるわけじゃなくて、決まった割合で釣り合うんだ。
だから、すき間にあるイオンの割合が分かれば、水に溶けていた量も計算で見積もれるんだ。

水の濃さも、どこかで直接はかったんだと思ってた。

はかったんじゃなくて、計算で見積もった値なんだ。
その見積もりでは、水に溶けていた塩のもとの濃さは、海水の約100分の1になるよ。

100分の1か。ずいぶん薄いんだね。
水は凍ったあと氷のまま宇宙へ抜けたとみられる

その薄い水がなくなる道すじは、大きく2つ考えられてるんだ。
液体のまま蒸発する道と、氷から直接気体になる昇華の道だよ。

昇華は、固体が液体を通らずに、直接気体になる変化のことなんだ。
ドライアイスがとけずに小さくなるのが、身近な例だよ。

ああ、ドライアイスは確かに、とけずに小さくなるね。

ドライアイスは二酸化炭素で、こっちは水の氷だけど、変わり方は同じなんだ。
一方、水が干上がると、残った水は濃くなって、最後に溶けきれない塩が結晶として出てくるよ。

研究グループの見立てでは、もとの天体で水が凍って液体の水が減るにつれ、塩のもとの濃さは上がったんだ。
ところがそのあいだも、塩素は粘土鉱物に取り込まれて、塩ができるのを抑えたとみられてるよ。

塩が少ないことと、水の消え方は関係あるの?

あるんだ。塩の結晶がほぼ残ってないことは、水が液体のまま干上がったんじゃないとみる手がかりなんだよ。
そこで研究グループは、リュウグウの水は主に氷の昇華で抜けたと考えてるんだ。

流れを順に見るよ。もとの天体の表面を氷がふたみたいに覆って、その下で水と岩が反応したんだ。
そのあと表面から下へ凍っていったよ。

最後はリュウグウが、太陽に近い側へ移るあいだかそのあとに、宇宙で氷が昇華して水を失ったとみられてるよ。

ベンヌの砂には水が干上がってできた鉱物がある

ほかの小惑星の砂とも比べてみるよ。探査機OSIRIS-REx(オサイリスレックス)は、小惑星ベンヌの砂を持ち帰ったんだ。
ベンヌは、リュウグウと似た生まれ方だと考えられてきたよ。ただ、これは仮説なんだ。

ところが、ベンヌの砂からは、塩と同じように水が干上がるときにできる鉱物がいくつも見つかってるんだ。
2つの小惑星で水の失い方が違ったと、論文の著者らはみてるんだよ。

生まれ方が似てると言われるのに、水の抜け方は別なんだね。
まとめ
- 放射光のX線の吸い込み方を手本と比べ、塩素の約9割が粘土鉱物の中にあると分かった
- ナトリウムも大部分が粘土鉱物にくっつき、水に溶けた塩のもとは海水の約100分の1と見積もられた
- 水が凍っていくあいだも塩素は粘土鉱物に取り込まれ、塩ができにくかったとみられる
- 塩の結晶が少ないことから、水は主に氷のまま昇華して抜けたと考えられる
電子顕微鏡でとらえられなかった塩素も、放射光を吸い込む具合から居場所を見分けられました。
居場所が粘土鉱物と分かったので、塩素が全部水に溶けていたという前提を置かずに、リュウグウの水を見積もり直せたのです。
火星に行くのに火星に降りない?JAXAの探査機MMXが打ち上げ成功
この記事は2026年10月20日に公開し、2026年10月29日に書き直しました。 日本の探査機MMXが、2026年10月20日の午前4時41分に打ち上げられました。火星まで約5年かけて往復しますが、降りるのは火星ではな […]
この記事は、東京大学と金沢大学ほか5機関が2026年10月16日に出したプレスリリースと、同じ日の論文によります。
資料は東京大学大学院理学系研究科の掲載ページと、Nature Communicationsの論文です。
はやぶさ2のカプセルを回収した日付は、2020年12月6日のJAXAの発表によります。



