頭の中で人や物を思い浮かべられない「アファンタジア」の研究が想像力に関する理論に影響を与えている - GIGAZINE
アファンタジアとは心の中で人や物といったイメージを視覚化できない状態のことであり、人口の約2~5%はアファンタジアであるといわれています。そんなアファンタジアに関する研究により、人間の想像力に関する理論がさらに進んでいるとのことです。
「赤いリンゴを思い浮かべてください」と言われても、何も見えない人がいます。これをアファンタジアと呼びます。人口の約2〜5%にあたるそうです。
そしてアファンタジアの研究が、頭の中の絵はどこに映っているのかという考え方を書き換えつつあります。
この記事の事実と数値はGIGAZINEが2026年9月16日に報じた記事によります。元になったレビュー論文は、学術誌 Consciousness and Cognition に掲載されたものです。
2019年の説では、頭の中にスクリーンがあった
ふだん物を見ると、目からの信号は脳のいちばん後ろにある一次視覚野に届きます。認知神経科学者のピアソン氏は2019年、思い描くときはこの流れが逆向きに働くというモデルを示しました。
| 順 | 2019年のモデルで起きること |
|---|---|
| 1 | 前頭部の計画する領域が「コップを想像しろ」と求める |
| 2 | 記憶の領域が、コップの細かな情報を渡す |
| 3 | 物を見るときと同じ一次視覚野に、その絵が映し出される |
つまり頭の中にスクリーンがあって、そこへ絵が映るという筋書きです。分かりやすい説明でした。
スクリーンを壊しても、絵は出た
ところが、この筋書きに合わない報告が2つ出てきます。1つめは、一次視覚野に大きな傷を負ったのに、思い描く力をなくさなかった患者が何人もいたことでした。
2つめは、頭皮から弱い電流を流して一次視覚野の働きを抑えた実験です。すると思い描く像は、かえってくっきりしました。スクリーンを壊しても絵は残り、暗くすると濃くなる。これでは投影という説明が成り立ちません。そしてアファンタジアの研究は、この矛盾を解く手がかりにもなりました。

3つの場所がそろうと、像が立ち上がる
では、像はどこで生まれるのでしょうか。数十件の脳画像研究をまとめた論文によると、思い描くときに活発になるのは脳の前の部分でした。そしてもう1か所が、左の側頭葉の下側にある紡錘状回です。脳卒中でこのあたりを使えなくなった建築家が、思い描く力を失った例もあります。
これらをもとに、豪クイーンズランド大学のアーノルド教授らがレビュー論文で出したのが新しい枠組みです。教授自身もアファンタジアだと明かしていました。前頭前野、紡錘状回、動きの計画にかかわる頭頂部あたりが、そろって働いたときに像が生まれるという考え方です。1か所に映すのではなく、いくつもの場所の共同作業で立ち上がるという見方でした。

どこがうまく働かないかで、欠けるものが変わる
アファンタジアは、心の中で人や物の姿を思い描けない状態で、人口の約2〜5%にあたるといわれます。この枠組みに立つと、アファンタジアの人のあいだで欠け方がそろわないことにも説明がつきます。ネットワークのどこがうまく働かないかで、欠ける部分が変わるからです。
実際、アファンタジアの人の約4分の1は、音や味、におい、手ざわりも思い浮かびません。しかし見た目の像だけが欠けるアファンタジアの人もいれば、夢の中では画像が見える人もいます。アーノルド教授らは、画像で考える人と頭の中の声で考える人の違いも、同じネットワークの差で説明できると見ています。
まとめ
- 2019年のモデルは、一次視覚野というスクリーンに絵が映るという筋書きだった
- しかし一次視覚野を傷つけても思い描け、働きを抑えるとかえって鮮明になった
- 新しいレビューは、前頭前野、紡錘状回、頭頂部あたりの協調で像が立ち上がるとする
- アファンタジアは人口の約2〜5%。欠け方がそろわないのは、ネットワークのどこが弱いかが違うから
- 約4分の1は、音や味などの想像もない
アファンタジアの研究が示したのは、頭の中の絵が一次視覚野というスクリーンに映るものではないということでした。前頭前野と紡錘状回、頭頂部あたりがそろって働いたときに立ち上がり、そのどこが弱いかで見え方に幅が出ます。

