頭の中で人や物を思い浮かべられない「アファンタジア」の研究が想像力に関する理論に影響を与えている - GIGAZINE
アファンタジアとは心の中で人や物といったイメージを視覚化できない状態のことであり、人口の約2~5%はアファンタジアであるといわれています。そんなアファンタジアに関する研究により、人間の想像力に関する理論がさらに進んでいるとのことです。
「赤いリンゴを思い浮かべてください」と言われても、何も見えない人がいます。これをアファンタジアと呼びます。人口の約2〜5%にあたるそうです。
そしてその研究が、いま想像のしくみそのものを書き換えつつあります。
この記事の事実と数値はGIGAZINEが2026年9月16日に報じた記事によります。元になったレビュー論文は、学術誌 Consciousness and Cognition に掲載されたものです。
思い浮かばない、という人たち
アファンタジアとは、心の中で人や物の姿を思い描けない状態を指します。研究が本格化したのは2010年で、思い描く力を後から失った男性の事例が報告されたことがきっかけでした。
その報告のあと、「自分はそもそも最初から見えない」という人が現れます。研究者のなかにも、自身がアファンタジアだという人がいました。
さらにアファンタジアの人のうち約4分の1は、視覚以外の感覚についても同じだと報告されています。聴覚や味覚、嗅覚、触覚の想像がまったくないという人たちです。
怖い話を読んでも、皮膚が反応しない
この違いは、体の反応にも出ていました。アファンタジアの人がホラーな物語の文章を読んでも、皮膚に流れる電流の高さが変わらないのです。
ただし恐怖を感じさせる写真を見せると、電流の高さは上がります。つまり恐怖という感情がないわけではありません。アファンタジアでも反応が出るのは写真のほうで、文章のほうではありませんでした。

一次視覚野に絵が映る、という2019年のモデル
ふだん人がコップを見ると、目から入った信号は脳のいちばん後ろにある一次視覚野に届きます。認知神経科学者のピアソン氏は2019年、想像するときはこの経路が逆に働くというモデルを示しました。
| 順 | 2019年のモデルで起きること |
|---|---|
| 1 | 前頭部の計画領域が「コップを想像しろ」と要求する |
| 2 | 記憶領域が、コップの詳細な情報を提供する |
| 3 | 実際に物を見るときと同じ一次視覚野に、その絵が投影される |
つまり頭の中にスクリーンがあって、そこへ絵が映るという筋書きです。分かりやすい説明でした。
スクリーンを壊しても、絵は出た
ひとつは症例報告です。一次視覚野に広い損傷を受けたにもかかわらず、頭の中で絵を思い描く力が保たれていた患者が複数いました。
そしてもうひとつは、頭皮に弱い電流を流す実験です。一次視覚野の活動を抑えたところ、被験者はかえってより鮮明に思い描けました。
スクリーンを壊しても絵は出るし、スクリーンを暗くすると絵は濃くなる。だから投影という筋書きでは、この2つが説明できません。
3つの領域がそろうと、像が立ち上がる
数十件の脳画像研究をまとめた論文では、想像するときに活発になる場所が確認されています。脳の前の部分と、左側頭葉の下にある紡錘状回でした。
そして脳卒中でこの付近を使えなくなった建築家の男性が、想像する力を失ったという報告もあります。
自身もアファンタジアだというクイーンズランド大学のアーノルド教授らは、新しいレビュー論文でこう提案しました。
前頭前野、紡錘状回、そして運動の計画に関わる頭頂部あたりの領域が協調して働くことで、心の中の視覚的な像が生じる
つまりどこか1か所に映るのではなく、いくつもの領域がそろったときに立ち上がるという考え方です。

どこが不調かで、欠ける感覚が変わる
この考え方に立つと、アファンタジアの程度や状態に差がある理由も説明がつきます。ネットワークのどこで不調が起きたかで、欠ける部分が変わるからです。
実際に、視覚の像だけが欠けている人もいれば、聴覚や味覚の像も欠けている人もいます。夢の中では画像が見えるという人もいました。
そして2019年のモデルに代わるこの枠組みは、アファンタジアではない人にも当てはまる、とアーノルド教授らは考えています。ネットワークの違いが、考えるときの形の違いを生んでいるという見方です。
- 主に画像や動画で考える人
- 主に頭の中の声で考える人
- 嗅覚や動きで考える人
まとめ
- アファンタジアは心の中で姿を思い描けない状態で、人口の約2〜5%といわれる
- そのうち約4分の1は、聴覚や味覚などの想像上の感覚もない
- 怖い文章を読んでも皮膚の電流は変わらないが、怖い写真では上がる。感情が無いわけではない
- 2019年のモデルは一次視覚野に絵が投影されるという筋書きだった
- しかし一次視覚野を損傷しても思い描けて、活動を抑えるとかえって鮮明になった
- 新しいレビューは、前頭前野・紡錘状回・頭頂部の協調から像が立ち上がるという枠組みを示している
頭の中の像は、一次視覚野というスクリーンに映るものではありませんでした。前頭前野と紡錘状回、頭頂部あたりが協調したときに立ち上がります。だからそのネットワークのどこに違いがあるかで、見え方にも幅が出ました。

