「技術のことば」シリーズのアイキャッチ。マゼンタとシアンの抽象背景に、シリーズ名と用語「絶対零度」

絶対零度は、セ氏でいうと-273.15℃です。この温度の物差しは、長いあいだ水をよりどころに決められていました。
ところが2019年、そのよりどころは水から物理の決まった値へ移っています。なぜ水ではだめで、代わりに何を置いたのでしょうか。

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この記事の定義と数値は、産総研 計量標準総合センターの「熱力学温度:ケルビン(K)」によります。

絶対零度は、ケルビンの0

温度の単位には、ふだん使うセ氏のほかにケルビンがあります。記号はKで、国際単位系が定めた7つの基本単位のひとつです。

産総研によると、セ氏の数は、ケルビンの数から273.15を引いたものです。目盛りの幅は同じで、出発点だけがずれています。だから絶対零度の0Kから273.15を引くと、-273.15℃になるわけです。

2本の縦長の目盛りが並んでいる。刻みの間隔は同じだが、一方が下へずれており、そのずれの幅が光る線で示されている
1954年から、水の三重点を273.16Kと決めていた

では、ケルビンの目盛りそのものは何で決めていたのでしょうか。1954年から2019年まで、基準は水の三重点でした。三重点とは、氷と水と水蒸気が同時に存在できる一点のことです。

その温度をちょうど273.16Kと決めて、そこからケルビンを刻んでいました。セ氏とのずれは273.15なので、この点はセ氏でいうと0.01℃にあたります。

水は、混ざっているもので三重点が動く

ところが、この決め方には弱点がありました。水の性質に頼っているので、使う水の中身に左右されるのです。

産総研によると、三重点の温度は、水に含まれる同位体の割合や不純物の濃さでわずかに変わります。計測の技術が進んだことで、その影響が見えるようになりました。つまり物差しの側が、わずかに揺れていたわけです。

左に水の入ったガラス容器があり光がぼやけている。右には鋭く安定した小さな光点があり、容器から光点へ一本の線が伸びている
2019年、エネルギーと温度を結ぶ定数を固定した

そこで2019年5月20日、ケルビンの定義が改められました。いまはボルツマン定数の値を、1.380649×10-23ちょうどと決めることで定まっています。

この定数の単位はJ/Kで、エネルギーを温度で割った形をしています。つまりエネルギーと温度の換算の比率を固定したので、特定の材料に左右されなくなりました。そしてセ氏との273.15のずれは、改定のあともそのまま保たれています。

ふだんの温度計は、いまも定点で合わせる

では、身のまわりの温度計はどう合わせているのでしょうか。産総研によると、実際の目盛り合わせには1990年に定めた国際温度目盛が、2019年の改定後も使われています。

これは、三重点や凝固点といった決まった温度の点を並べ、あいだを温度計で埋める仕組みです。定義の土台が変わっても、日々の合わせ方は決まった点を頼りに続いていました。

まとめ
  • セ氏の数は、ケルビンの数から273.15を引いたもの。だから0Kは-273.15℃
  • 1954年から2019年まで、ケルビンは水の三重点を273.16Kと決めて定義していた(三重点は0.01℃)
  • 水の三重点は、同位体の割合や不純物の濃さでわずかに動く
  • 2019年5月20日から、ボルツマン定数を1.380649×10-23 J/Kと決めて定義している
  • 改定のあとも、セ氏とのずれ273.15は変わらない
  • 実際の温度計の目盛り合わせには、定点を使う1990年の国際温度目盛がいまも使われる

温度の物差しは、長く水という物質の性質に頼っていました。2019年からは、エネルギーと温度を結ぶボルツマン定数の値を固定することで、物質に左右されない基準になっています。