「技術のことば」シリーズのアイキャッチ。マゼンタとシアンの抽象背景に、シリーズ名と用語「F値」
F値:写真用語集|個人|キヤノン

よく耳にする写真の撮影方法やカメラに関する専門用語をあつめて、初心者の方でもわかりやすく作例やイラスト入りで解説しました。

カメラのレンズには、F1.4やF8という数が刻まれています。小さいほうが明るいと言われますが、数が小さいのに光をたくさん通すのは奇妙な話です。
この裏返しは、F値が割り算の答えだから起きていました。割られる数と割る数が何なのかが分かれば、奇妙さは消えます。

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この記事の定義と数値はキヤノンの写真用語集によります。「明るいレンズ」の説明はニコンのデジタル一眼レフカメラの基礎知識に記載されたものです。

F値は、焦点距離を穴の直径で割った数

F値は、レンズそのものに刻まれた数ではありません。キヤノンの用語集は、この数を「レンズの有効口径と、そのレンズの焦点距離によって求めます」と説明しています。

有効口径とは、レンズの前面から入ってセンサー面へ届く光の束の、その入口側の直径のことです。そして焦点距離は、レンズから像が結ばれる位置までの長さを指します。つまりF値は、この2つを比べた値です。

用語集が挙げている例で確かめてみます。有効口径が100mm、焦点距離が280mmのレンズなら、口径比は1対2.8です。そしてこのレンズのF値はF2.8です。

項目この例での大きさ
焦点距離280mm
有効口径(穴の直径)100mm
口径比1 対 2.8
F値F2.8
レンズ鏡筒の断面図。前面の開口の直径と、センサー面までの光路の長さを示す2本の計測線
だから、穴が大きいほど数は小さい

ここまで来ると、裏返しに見えた関係がほどけました。F値は焦点距離を穴の直径で割った答えなので、穴が大きくなるほど割る数が大きくなり、答えは小さくなります。

さきほどの280mmのレンズで考えると、穴が100mmならF2.8です。その穴を2倍の200mmに広げれば、答えは1.4まで下がります。逆に穴を半分の50mmまで絞れば、答えは5.6へ上がります。

つまりF値が小さい数を指すとき、それは穴が小さいのではなく、焦点距離に対して穴が大きいという意味です。キヤノンも「数字が小さいほど穴は大きく開き、数字が大きいほど穴は小さくなります」と記しました。

同じ大きさのレンズ3本を正面から見た図。絞りの開口が大・中・小と異なり、それぞれの直径に発光した計測線が引かれている
「明るいレンズ」という言い方

カメラの世界には、レンズを明るいと呼ぶ言い方があります。ニコンの基礎知識は、絞りをもっとも開いた状態を開放絞りと呼び、そのときのF値を開放絞り値と説明しました。

そして「開放絞り値の小さいレンズを明るいレンズといいます」と続きます。理由も書かれていて、開放絞り値が小さいレンズは撮像素子上に写る像を明るくできるからです。

だから明るいという言葉は、レンズの色や見た目を指していません。焦点距離に対して穴が大きく、光をたくさん通せる、という意味です。

望遠レンズが太い理由も、同じ割り算から出てくる

F値が割り算だと分かると、別のことも見えてきます。さきほどの例をもう一度見てください。焦点距離280mmでF2.8を作るには、穴の直径が100mm必要でした。

焦点距離が長いレンズほど、同じF値を保つには大きな穴が要ります。スポーツの撮影現場に並ぶ望遠レンズが太いのは、そのためです。見た目の迫力ではなく、割り算の結果としてあの太さになりました。

では、f/1.48はどれだけ開いているのか

最初のf/1.48に戻ります。これも割り算の答えですから、逆から見れば穴の大きさが分かります。1を1.48で割ると約0.68です。

つまり光の入口は、焦点距離の約7割の太さまで開いています。さきほどの280mmのレンズで同じ比を作るなら、穴の直径は約189mm要ります。iPhoneのレンズは指先ほどの大きさですが、比率でいえばそれだけ大きく開いていました。

まとめ
  • F値は焦点距離を有効口径で割った答え。レンズに刻まれた固有の数ではない
  • キヤノンの例では、焦点距離280mm・有効口径100mmで口径比1対2.8、つまりF2.8
  • 割る数である穴が大きくなるほど答えは小さくなるので、数が小さいほど穴は大きい
  • ニコンは開放絞り値の小さいレンズを「明るい」と呼び、像を明るくできるためだと説明している
  • 焦点距離が長いほど同じF値に必要な穴は大きくなる。望遠レンズが太いのはそのため
  • f/1.48は、光の入口が焦点距離の約7割まで開いているという意味になる

奇妙に見えた決まりごとの多くは、定義までさかのぼると理由が出てきます。F値の場合は、割り算という一行の定義がすべてを決めていました。
身のまわりで「小さいほうが良い」とされている数を、ひとつ探してみてください。何を何で割った値なのかが分かると、その数の意味が変わります。