クアルコム、スマホ向けチップ「Snapdragon」値上げへ - ケータイ Watch
米クアルコムは7月29日(現地時間)、2026年会計年度第3四半期(4~6月期)の業績を発表した。説明会では、半導体製造や部材コストの高騰に対応するためスマートフォン向けを含むチップセットの製品価格を引き上げる方針が明らかにされた。あわせて、アップル向けのモデム供給シェアが従来想定を下回ることにも触れられた。
スマートフォンの中には、小さな部品がぎっしり入っています。その値段が、いま上がっています。
スマホの頭脳を作る米国のQualcommは、2026年9月から値上げを始めました。上げ幅は二桁%、つまり10%以上です。しかし同社の社長で最高経営責任者のアモン氏は、この値上げを「小さい」と言いました。スマホの部品は、なぜ高くなっているのでしょうか。そして買う側には、どう響くのでしょうか。
そもそも、考えるチップと覚えるメモリは別もの
端末の中で計算をこなすのは、半導体でできた小さなチップです。アプリを動かしている間に使うデータや、写真などのデータをためておく役目は、メモリが受け持ちます。たとえるなら、チップは考える頭、メモリは書いたものを置いておく机やノートのようなものです。実際の役目はもっと細かく分かれていますが、この記事ではこの区別で足ります。
QualcommはSnapdragonという名前のチップを作っている会社です。Androidスマートフォンの多くが、このチップを頭脳として積んでいます。これに対してメモリは、Qualcommではなく別の会社が作っています。
メモリを大量に使うのは、スマートフォンだけではありません。たくさんのコンピューターを並べて動かす建物、データセンターでも大量に使われます。AIのサービスを動かしているのも、このデータセンターです。
Qualcommは2026年9月から、製品を順に値上げしている
社長は米CNBCの取材に、9月1日から幅広く値上げすると答えました。また同社は決算説明会(会社が売上やもうけを報告し、質問に答える会)で、上げ幅は二桁%だと説明しています。上げる対象は、スマホ向けに限らずさまざまな市場です。
ただし、すでに結んだ契約が終わるのを待つものや、新しい製品への切り替えを待つものもあります。そのため、実際の値上げは時間をかけて少しずつ広がるという説明でした。
なお、Qualcommが公式に出した決算の発表資料には、上がった製造費を製品の価格に反映させるとは書かれています。しかし、上げ幅と日付は載っていません。二桁%も9月1日も、説明会や取材で口頭で語られたものです。
社長が「小さい」と比べた相手は、メモリの値上がり
説明会でアモン氏は、この値上げについて、増えた製造費をそのまま上乗せしただけだと話しました。そのうえで同氏は、端末1台に積むメモリの費用の上がり方と比べれば、実は小さいと続けています。
つまり比べた相手は、同じ端末に積む別の会社のメモリの値上がりでした。メモリがどれだけ上がったかは、説明会でも発表資料でも数字では示されていません。
メモリは、なぜ値上がりしているのでしょうか。最初に見たとおり、データセンターでもメモリは大量に使われます。同氏は、そのデータセンターの需要が増えて、部品の供給が足りなくなっていることを背景に挙げています。

もうけの割合を下げたのは、満杯の工場と安いチップへの流れ
では、Qualcommはなぜ値上げをしたのでしょうか。説明会では、チップ部門のもうけの割合が下がった理由として、2つが挙がりました。もうけの割合とは、売上から作る費用を引いて残る分が、売上の何割にあたるかです。
1つめは、半導体を作る工場がどこも満杯なことです。アモン氏によると、業界はおそらく、新型コロナが流行して半導体が足りなくなったころとよく似ています。チップのもとになる板づくりから組み立て、検査までがフル稼働です。だから空きがなく、どの工程でも料金が上がっています。こうして、Qualcommがチップを作る費用そのものが上がりました。
2つめは、メモリ高がスマホメーカーの選び方を変えたことです。Qualcommは、高性能な機種向けにも何種類かのチップを用意しています。メモリの値上がりへの対応として、メーカーはその中の安いほうや、前の世代のチップを選ぶようになりました。
このため、Android向けのチップの出荷が一時的に減り、利益の出にくい安いチップが占める比率が高まりました。この2つの理由から、チップ部門のもうけの割合は、これまで続いてきた範囲を少し下回るとアモン氏は述べています。二桁%の値上げは、上がった製造費を価格に乗せるものです。同社は、値上げが少しずつ行き渡れば、この割合は元の範囲へ戻ると見込んでいます。
スマホを買う側から見ると、部品代が二重に上がっている
ここまでを、買う側から見直しましょう。1台を作るのにかかるお金は、メモリとチップの両方で上がっています。社長の見方では大きいのはメモリのほうで、チップの上げ幅はそれに比べれば小さいということです。
ただし店頭での価格を決めるのは、Qualcommではなく、スマホメーカーや売る側です。そしてQualcommの説明には、店頭の値段がいつ、どれだけ変わるかは含まれていません。チップの値上げそのものも、契約によって時間をかけて広がります。
ただ、メモリ高の中ですでに見えている動きもあります。メーカーが安いチップや前の世代のチップを選ぶようになったことです。つまりメモリが高くなる中で、メーカーは積むチップの選び方を変えて対応しています。
まとめ
- スマートフォンの中には、考える役のチップと、データをためる役のメモリが別々に入っている
- Qualcommは2026年9月から、スマホ向けに限らずさまざまな製品を、順に二桁%値上げしている。幅も日付も、公式の発表資料ではなく説明会や取材で語られた
- 社長が「小さい」と比べた相手は、同じスマホに積むメモリの値上がり
- Qualcommのもうけの割合が下がった理由は、工場がどこもフル稼働で製造費が上がったことと、メモリ高で安いチップが選ばれたこと
- 店頭のスマホの値段がいつ、どれだけ変わるかは、Qualcommの説明に含まれていない
考えるチップと覚えるメモリの値段は、それぞれ別の理由で動きます。今回、チップの値段を押し上げたのは、満杯の工場で上がった製造費でした。しかし社長の言葉では、それより大きく上がったのがメモリです。
この記事の内容は、Qualcommの決算発表(2026年7月29日)と、同日の決算説明会の書き起こしによります。9月1日という日付は、米CNBCの取材記事(2026年7月29日)によります。

