マラソン中のランナーの体内では大麻成分に似た物質が生成され続けているとの研究結果 - GIGAZINE

長距離を走るランナーは時にランナーズハイと呼ばれる状態になり、長く走ったことで疲労や痛みがあるにもかかわらず、快感や恍惚(こうこつ)感を覚えることが知られています。マラソン中のランナーの血液を分析した新たな研究により、ランナーの体内では大麻の生理活性物質に似た成分が生成されていることが示されました。

走っていると気分が高まる現象は、ランナーズハイと呼ばれます。その正体を調べた研究が、2026年9月1日に学術誌「BMC Medicine」へ載りました。ドイツのデュイスブルク・エッセン大学などのチームによるものです。
調べ方が変わっていて、同じ人にマラソンと歩行の両方をやってもらいました。そのうえで走っている最中の血液を、14kmごとに採っています。体の中では、何が増えていたのでしょうか。

この記事の数値は学術誌「BMC Medicine」に2026年9月1日付で掲載された論文に記載されたものです。

同じ人が、走って、歩いた

マラソンに参加したのは19人で、エッセンにあるバルデナイ湖のまわりを14kmずつ3周しました。走った距離は平均で42.94kmです。

そして1か月から2か月あと、同じ人たちが同じ道を歩きました。このときかかる時間をそろえてあり、同じ長さだけ体を動かして同じ時点で採血する設計です。

走った日歩いた日
平均の距離42.94km21.17km
心拍数145.08拍/分102.09拍/分
最大心拍数に対する割合82.71%57.59%
1kmあたりの時間6.95分12.24分

時間が同じでも、体にかかる負荷は大きく違います。この差が血液に出るかどうかが、研究の見どころになりました。

14kmを超えると、差がつきはじめる

測られた物質はアナンダミドで、体の中で作られ、大麻の成分と同じ受け皿にはたらきかけます。名前はサンスクリット語の「至福」に由来する言葉です。

アナンダミドはマラソンの最中に少しずつ増え続け、歩いた日と比べて14kmを過ぎたあたりからはっきり高くなりました。しかも走り終えて45分休んだあとも高いままで、体を止めてもすぐには元に戻らなかったのです。

湖畔の道を走るランナーの後ろ姿と、体から立ちのぼる光
最初は、歩いている人のほうが多かった

もうひとつの物質2-AGは、山が2つある形を示しました。序盤は、歩いた日のほうが高かったのです。ところが後半で逆転し、42km地点と走り終えたあとでは走った日が上回っています。

つまり同じ運動でも、時間の経ち方で向きが変わりました。PEAという別の成分も測られ、こちらも回を追うごとに増えています。ただし走っても歩いても同じように変化していて、運動の強さと結びつかない成分もありました。

230km走っても、多幸感は増えなかった

研究チームは、マラソンより長い距離も調べています。ドイツで開かれた大会で100km、160km、230kmを走った36人が対象でした。参加者は平均で57回のマラソンと41回の超長距離走を終えた人たちです。

血液の結果は共通していて、3つの距離すべてでアナンダミドも2-AGもレース後に増えました。ところが、気分の結果は違います。

  • マラソンでは、歩いた日より多幸感が高く、不安が低い
  • マラソンでは、28kmを過ぎると痛みが増える
  • 超長距離走では痛みが増え、不安は減った
  • 超長距離走では、多幸感が有意に変わらなかった

つまり距離を伸ばせば気分も高まる、という単純な関係ではありません。血液の中の物質が増えても、感じ方が同じように動くとは限らないのです。

まとめ
  • マラソン中のアナンダミドを調べた研究が2026年9月1日に公表された
  • 19人がマラソンと時間をそろえた歩行の両方を行い、14kmごとに採血した
  • アナンダミドは走行中に増え続け、14km以降は歩行より高く、45分後も高いままだった
  • 2-AGは序盤は歩行のほうが高く、後半で逆転した
  • 100kmから230kmの超長距離走では痛みが増え、多幸感は有意に変わらなかった

気分という言葉でひとまとめにしているものの中に、別々に動く部品が入っていました。痛みと不安と多幸感は、同じ方向へ動くとは限りません。
運動したあとの自分の状態を、3つに分けて書き出してみてください。ひとつの言葉では足りないことに気づくはずです。