「卵の殻」をまねて宇宙ゴミから宇宙船を守るシールドが考案される - GIGAZINE

宇宙船や人工衛星は、軌道上を高速で飛び交うスペースデブリ(宇宙ゴミ)との衝突に備える必要があります。中国・大連理工大学の研究チームが、卵の殻に着想を得た新たな宇宙船シールドを考案しました。

中国の大連理工大学の研究チームが、宇宙ゴミから宇宙船を守る新しいシールドを考えました。成果は2026年9月8日、学術誌「Journal of Applied Physics」に載っています。
使うのは分厚い装甲ではなく、水を入れた卵の殻の形をした部品をたくさん並べる構造です。数値解析では、ぶつかってくる宇宙ゴミの速度をおよそ65%落とせるという結果が出ました。なぜ卵の殻の形なのでしょうか。

この記事の数値の出どころは学術誌「Journal of Applied Physics」です。掲載は2026年9月8日になります。

1cmのかけらが、秒速8kmで飛んでくる

地球のまわりを回る物体は秒速7kmから8kmで動いていて、ピストルの弾よりずっと速い速度です。この速さでは、わずか1cmほどのかけらでも宇宙船にとって脅威です。

使われなくなった衛星やロケットの破片は宇宙ゴミと呼ばれ、数が増えるほどぶつかる危険も上がっていきます。だから宇宙船には、宇宙ゴミの体当たりを受け止める板が要ります。

卵の殻の形を、並べる

研究チームが考えた構造は、2枚のアルミの板ではさむ形です。あいだに卵の殻の形をしたアルミ製の小さな部品を並べ、その内側を水で満たします。

この並びはアルミの板だけを重ねた構成より良い結果を示し、飛んでくる宇宙ゴミの速度がおよそ65%落ちました。しかも水を使う理由は形だけでは説明がつかず、内側の水が衝撃波を抑えるはたらきを持つと記されています。

ただし、この65%はコンピューター上の数値解析で得られた値です。実際に宇宙ゴミを模した弾を撃ち込んだ試験の結果ではありません。

2枚の金属板にはさまれた水入りの卵型セルと、衝突点から隣へ広がる変形
尖った側を、外に向ける

卵の形には丸い側と尖った側があり、大連理工大のチームは尖った端をぶつかる側へ向けた構成を調べました。するとその端から形がつぶれはじめ、つぶれは止まらずとなりの部品へ順に広がっていきます。

つまり衝撃が1点にとどまらず、構造の全体へ散っていく形です。論文はエネルギーの逃がし方を2つ挙げています。

  • 部品が次々につぶれていく、連続的な変形
  • 内側の水が衝撃波を抑えるはたらき
構成示された結果
アルミの板だけ基準となる構成
水入りの卵殻形を並べた構成飛翔体の速度をおよそ65%低減
硬くするのではなく、散らす

守り方には2つの考え方があり、ひとつは硬く分厚くしてそこで止めるやり方です。ただし宇宙船では重さがそのまま打ち上げの負担になるため、この道は選びにくくなります。

そこで出てくるのが、今回の散らす考え方です。受けた力を1か所にためず、隣へ隣へと渡していきます。卵の殻は薄いのに割れにくい形として知られ、そこから発想を借りました。

こうした設計は生物模倣と呼ばれ、生き物の形や仕組みを工学の設計へ持ち込むやり方を指します。宇宙ゴミという新しい問題に、卵という古い形が当てられました。

まとめ
  • 大連理工大学の研究チームが、宇宙ゴミから宇宙船を守るシールドを考案した
  • 構造は、水を入れた卵殻形のアルミ部品を2枚の板のあいだに並べたもの
  • 数値解析で、飛んでくる宇宙ゴミの速度をおよそ65%低減できた
  • 尖った端を衝突側へ向けると、そこから変形が始まり隣へ広がる
  • エネルギーを逃がすのは連続的な変形と水による衝撃波の抑制

身のまわりで最も薄くて丈夫な入れ物は、たぶん卵の殻です。形が力を受け流しているから、あの薄さで中身を守れています。
机の上の物をひとつ手に取って、なぜその形なのかを考えてみてください。強さは材料だけで決まっているわけではありません。