「空飛ぶタクシー」の米ジョビ―、生産能力倍増へ | ロイター

「空飛ぶタクシー」向けの機体開発に取り組む米新興企業ジョビー・アビエーションは17日、需要拡大を見込み、米国内の製造能力を倍増させると発表した。

空飛ぶタクシーは、都市の移動手段を変える存在として世界的に注目されています。中心にあるのが、電動垂直離着陸機eVTOL(イーブイトール)です。アメリカの新興企業ジョビー・アビエーションは、このeVTOLの生産能力をアメリカ国内で倍増させる計画を発表しました。トヨタ自動車も出資し、生産拡大を支援しています。

一方で、「空飛ぶタクシーはヘリコプターと何が違うのか」という疑問も多く聞かれます。eVTOLの仕組みとヘリコプターとの違い、都市の移動や社会への影響を見てみましょう。

空飛ぶタクシー(eVTOL)とは何か

空飛ぶタクシーと呼ばれる機体の多くは、電動垂直離着陸機であるeVTOLです。eVTOLは電動モーターを使い、滑走路を使わずに垂直に離着陸し、その後は前方向に飛行します。都市部の短距離移動を想定した設計で、交通渋滞の影響を受けにくい新しい空のモビリティとして位置付けられています。

ジョビー・アビエーションは、eVTOLを空飛ぶタクシーとして実用化することを目標にしています。同社はカリフォルニア州の製造拠点で、生産能力を2027年までに月2機から4機へ拡大する計画を示しました。生産体制を24時間稼働させるため、人員や設備への投資も進めています。

eVTOLとヘリコプターの構造の違い

eVTOLとヘリコプターは、垂直に離着陸できる点では共通しています。しかし、動力源や構造には大きな違いがあります。

ヘリコプターは燃料エンジンで大きなメインローターを回転させ、テールローターで機体の姿勢を制御します。
一方、eVTOLは電動モーターを動力とし、複数の小型プロペラを分散配置する構造が一般的です。電動化により排出ガスが発生せず、騒音を抑えやすい点が特徴です。このため、eVTOLは都市上空での運航を前提に設計されています。

都市の移動に特化した設計思想

eVTOLは、都市内や都市近郊の短距離移動を主な用途として想定しています。空飛ぶタクシーサービスでは、地上の渋滞を避けて人を短時間で移動させることを目的としています。そのため、騒音の低減に加え、効率的な離着陸場であるバーティポートの整備が重要な課題になっています。
ヘリコプターは、救急搬送や災害対応、山間部や離島へのアクセスなど、幅広い用途で利用されてきました。eVTOLは、こうしたヘリコプターの役割をすべて置き換える存在ではなく、都市交通に特化した新しいカテゴリーの移動手段として開発が進められています。

トヨタ自動車が関わる理由

ジョビー・アビエーションには、トヨタ自動車が出資しています。トヨタは、自動車製造で培ってきた生産技術や品質管理のノウハウを、eVTOLの量産体制づくりに生かす方針です。空飛ぶタクシーを実用化するには、安全性を確保したうえで、多数の機体を安定して製造する体制が欠かせません。
自動車メーカーとeVTOLメーカーの連携は、空のモビリティを実験段階から産業として成長させるための重要な動きといえます。生産効率や品質の考え方が、航空分野にも取り入れられています。

関連する動きと日本での状況

世界各地では、eVTOLの実用化を見据えた取り組みが進んでいます。専用の離着陸場の整備や、運航ルール、安全基準の検討が行われています。日本国内でも、2020年代後半の実用化を目標に、実証実験や制度設計が進められています。

まとめ
  • eVTOLは、電動モーターで垂直離着陸できる空飛ぶタクシー向けの航空機
  • ヘリコプターとは動力源や構造が異なり、都市での利用を前提に設計
  • ジョビー・アビエーションは、生産能力を月2機から4機へ拡大する計画
  • トヨタ自動車の出資と技術支援により、量産と実用化に向けた体制づくりが進む

空飛ぶタクシーとして開発が進むeVTOLは、技術開発だけでなく、生産体制や制度整備の段階に入っています。ヘリコプターと同じ垂直離着陸機でありながら、騒音や排出ガスを抑え、都市交通に特化している点が大きな特徴です。今後、eVTOLが都市の移動手段として使われるようになったとき、通学や通勤、仕事の移動はどのように変わるでしょうか。空の移動が身近になる未来を想像しながら、技術と社会の関係について考えるきっかけにしてみてください。