「水素で走る車」と聞いて、どんな仕組みを思い浮かべますか?電気自動車といえばバッテリーで動くイメージが強いですが、実は水素を使った2つの先端技術が世界で注目されています。
オランダの学生チームが作る水素レースカーや、トヨタが開発する水素エンジン車・燃料電池車は、それぞれどんな特徴があるのでしょうか?その技術の違いや課題、未来の可能性を見てみましょう。
水素で走る車には2つのタイプがある
水素を使った車には、「水素エンジン車」と「燃料電池車(FCV)」の2種類があります。水素エンジン車は、ガソリンエンジンのように水素を燃やして動力を生み出します。トヨタはこの技術を使い、爆発によってピストンを動かし、タイヤを回す仕組みを開発しています。
一方、燃料電池車は水素と空気中の酸素を反応させて電気を作り、その電気でモーターを動かします。トヨタの「MIRAI」や、オランダの学生チーム「Forze Hydrogen Racing」のレースカーがこのタイプです。
水素エンジン車と燃料電池車のちがい
比較項目 | 水素エンジン車 | 燃料電池車(FCV) |
---|---|---|
エネルギーの仕組み | 水素を燃焼し熱でタイヤを動かす | 水素と酸素で電気を作りモーターで走行 |
駆動方法 | エンジン(内燃機関) | モーター |
排出物 | 水+ごく少量のCO₂やNOx | 水のみ |
技術ベース | ガソリン車のエンジン技術を活用 | 新しい燃料電池技術を使用 |
走りの感覚 | エンジン車に近い音と加速 | 電気自動車に近い静かでなめらかな走り |
水素エンジン車はガソリン車に近い感覚を残しているため、乗りなれた感覚を好む人に向いています。一方で燃料電池車は、より環境にやさしく、静かな運転が可能です。
水素エンジン車の課題とは?
水素エンジン車には、技術面で乗り越えるべき課題があります。
- 水素の燃焼制御が難しい:燃焼速度が速く爆発範囲も広いため、正確な点火制御が必要です。
- 高圧水素タンクの安全性:水素は漏れやすいため、特殊な設計で高圧保存し、安全装置を備える必要があります。
- インフラ整備が不足している:水素ステーションがまだ少なく、補給のハードルが高い状況です。
- コストの高さと量産の難しさ:まだ製造コストが高く、普及には大きな投資が必要です。
- 燃費と航続距離の課題:同じ水素量でも、燃料電池車より走れる距離が短い傾向にあります。

学生が作る!水素レースカーの最前線
オランダの学生チーム「Forze Hydrogen Racing」は、水素燃料電池を搭載したレースカーを開発しています。2018年に開発された「Forze VIII」は、最高時速210km、0-100km加速4秒以下という性能を持ち、2019年にはクラス2位を記録しました。
現在は次世代型「Forze IX」の開発が進んでおり、四輪駆動や水素の貯蔵量の増加といった技術の進化が注目されています。
世界で広がる水素技術と新たな動き
水素技術はオランダに限らず、イギリスやアジア諸国でも注目されています。2025年には、世界初の水素レースシリーズ「Extreme H」がスタートする予定です。トヨタも水素を活用した物流車や商用車の開発を進めており、実用化が加速しています。
まとめ
- 水素で走る車は「水素エンジン車」と「燃料電池車」に分かれる
- 燃料電池車は排出物が水のみで環境にやさしい
- 水素エンジン車には燃焼制御や安全性の課題がある
- 世界中の学生や企業が水素技術の開発に取り組んでいる
- 将来の交通・物流インフラの中心となる可能性がある
水素技術は環境問題やエネルギー不足の解決につながる可能性を秘めています。経済面でも、新しい産業や雇用を生む力があります。なぜ多くの企業や研究者が水素に注目しているのか、自分でも調べてみませんか?また、学校の授業や身近な交通手段と結びつけて、どんな未来が来るのかを想像してみましょう。