https://www.cnn.co.jp/fringe/35232601.html

もし毒ヘビにかまれたら、どうなると思いますか?実は、世界では毎年約8万〜13万人がヘビ毒で命を落としています。
そんな中、アメリカのティム・フリーデさんは自らの体にヘビ毒を注射し、抗体を作り出しました。この取り組みが、新しい治療薬の開発につながっています。
ヒト由来抗体とバイオテクノロジーの進化が、どのように医療を変え、命を救っているのでしょうか。

ヘビ毒の被害と従来の治療法

世界で広がるヘビ毒被害
毎年、世界では約540万人がヘビにかまれています。そのうち180万〜270万人が毒の影響を受け、約8万〜13万人が亡くなっています。後遺症や手足の切断といった障がいを負う人も約40万人にのぼります。特にアフリカやアジア、南米の発展途上国では、医療体制の不足や抗毒素の供給不足が深刻です。

従来の抗毒素の問題点
これまでの抗毒素は、馬などの動物にヘビ毒を少しずつ注射して抗体を作り、血液から取り出す方法が主流でした。しかし、動物由来の抗毒素にはアレルギー反応などの副作用があり、製造にも時間やリスクが伴います。さらに、多くの抗毒素は特定のヘビ毒にしか効かず、万能ではありませんでした。

ヒト由来抗体による新しい治療の可能性

自ら抗体を作ったティム・フリーデ氏
アメリカのティム・フリーデさんは、18年にわたり自分の体にさまざまなヘビ毒を注射して抗体を獲得しました。その結果、19種類ものヘビ毒に対応できる体になり、その血液が研究に役立てられています。免疫学者のグランビル博士は、この血液から抗体を取り出し、新しい抗毒素の開発に成功しました。

ヒト由来抗体の特長とは
フリーデ氏の血液から得られた抗体は、人間由来のため副作用が少ないとされています。19種類のヘビ毒に対応できるため、さまざまな患者を助けることができます。実際に行われたマウス実験では、13種類に対して完全な効果を示し、残りの6種類にも一部効果がありました。

バイオテクノロジーの力で大量生産へ
近年では、「モノクローナル抗体」という技術によって、人工的に人の抗体を作ることが可能になっています。この技術により、安全かつ効果的な抗毒素を大量生産する道が開かれています。動物を使わずに作れることも、安定供給と倫理面での大きな進歩といえるでしょう。

ヘビ毒以外の毒や感染症と世界の対策

蚊が運ぶマラリアやデング熱でも、毎年およそ72万人が命を落としています。有毒植物による食中毒や、他の動物による被害も深刻です。世界保健機関(WHO)は、2030年までにヘビ咬傷による死亡を半減させることを目標に、研究や支援を強化しています。

まとめ
  • 世界では毎年8万〜13万人がヘビ毒で死亡している
  • 従来の抗毒素は動物由来で副作用や製造の課題があった
  • ヒト由来抗体は副作用が少なく、多くのヘビ毒に対応可能
  • バイオテクノロジーの進化で、大量生産が期待
  • 医療技術の進歩は命を救うだけでなく、経済や産業にも影響を与える

医療やバイオテクノロジーの進化は、人々の命を守るだけでなく、新たなビジネスや研究機会も生み出します。新しい抗毒素の開発には多くの投資が必要ですが、実用化されれば大きな社会的価値と経済効果があります。
みなさんも、医療技術と社会・経済の関係に注目してみましょう。たとえば、どんな技術が次に世界を変えると思いますか?未来を考えるきっかけにしてみてください。