「タッチパネル使えない」 障害者の6割、ICT・無人化で困った経験 | 毎日新聞
2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者にも「合理的配慮」が義務化された。しかし、人手不足や経営合理化を背景に社会のICT(情報通信技術)化や無人化が進む中、障害のある人が街のあちこちで不便な思いを強いられている。
ICT(情報通信技術)は障害者にとって生活を支える大きな力となる一方で、新たな課題を生んでいることも事実です。
例えば、視覚障害者向けのスマートグラスは、カメラとAIを活用して周囲の状況を音声で伝えますが、価格が高く一般のユーザーには手が届きにくい現状があります。また、音声アシスタントやリモートワーク環境の整備が進む一方で、高度なITスキルが必要なシステムは障害者にとって操作が難しくなることもあります。
ICTが障害者支援に与える影響と、それによって生じる新たな問題について考えてみましょう。
改正障害者差別解消法とは?
1. 合理的配慮の義務化
2024年4月1日に改正された障害者差別解消法により、民間事業者は障害者から求めがあった場合に「合理的配慮」を提供することが義務となりました。これまでは努力義務でしたが、改正後は「提供しなければならない」と明確化されました。
2. 不当な差別の禁止
障害を理由にサービスを拒否したり、不利な条件をつけることが禁止されています。
3. 共生社会の実現
障害の有無にかかわらず、すべての人が共に生きる社会を目指し、行政機関や企業には連携や環境整備が求められます。
合理的配慮の例
- 車いす利用者のために段差をなくす。
- 視覚障害者向けに音声で情報を提供する。
この改正により、企業や公共機関の対応が見直され、より誰もが暮らしやすい社会が期待されています。
ICTがもたらす障害者支援の現状
1. 生活支援ツールとしてのICT
ICTは障害者の日常生活をサポートする重要な役割を果たしています。
- 視覚障害者向け:スマートフォンの音声読み上げ機能や、AR技術を活用した色覚サポートアプリ。
- 聴覚障害者向け:GoogleのLive TranscribeやAVAのリアルタイム字幕生成アプリ、SignAllの手話翻訳技術。
2. 就労支援とスキル育成
ICTは障害者の就労支援にも貢献しています。
- オンライン学習:プログラミングやデジタルデザインのスキル習得が可能。
- リモートワーク環境:自宅での勤務が可能になり、雇用機会が拡大。
ICTが開く新しい可能性
1. 当事者参加型技術開発
今後は、障害者自身が技術開発に関与し、自分のニーズに合ったツールやサービスを設計する「当事者参加型技術開発」が進むと予想されます。
- MicrosoftのAI for Accessibility:障害者向けのAIツールを開発。
- GoogleのProject Euphonia:発話障害者向けの音声認識技術を改良。
2. 教育分野でのICT活用
特別支援教育では、タブレットやVR(仮想現実)を活用した学習環境が整備されています。
- GoogleのExpeditions:仮想空間で世界中を探検しながら学べる。
- Otsimo:障害児向けの学習支援アプリ。言語や数学をインタラクティブに学習可能。

ICT普及に向けた課題と解決策
1. デジタル・ディバイドの解消
ICTの発展は多くの可能性を秘めていますが、地方や発展途上国ではインフラ整備が遅れており、デジタル・ディバイド(情報格差)が問題となっています。
- 解決策:公的助成や地域コミュニティによるデジタル教育が必要。
2. 社会全体での理解促進
企業や教育機関の理解を深めることも重要です。
- 合理的配慮の理解促進:企業が障害者の雇用機会を増やすための施策。
- 職場環境の整備:障害者が働きやすい環境を作る取り組み。
まとめ
- 現在:ICTは音声アシスタントやリモートワーク環境を通じて、障害者の生活や就労支援に大きく貢献している。
- 未来:当事者参加型技術開発や特別支援教育でのICT活用が進むことで、新しい可能性が広がる。
- 課題:デジタル・ディバイドの解消と、社会全体での理解促進が求められる。
テクノロジーは社会を変える力を持っています。しかし、その恩恵を誰もが平等に享受できるようにするためには、私たち一人ひとりの行動が重要です。身近な技術を活用し、障害のある人が快適に生活できる環境を作るために、あなたには何ができるでしょうか?