太陽光を熱に変換してわずか10分で30度も温度が上昇する新たな繊維が開発される - GIGAZINE
冬場の寒い屋外にいる時、「衣服がカイロみたいに発熱してくれればどれほど温かいだろう」と想像したことがある人もいるかもしれません。新たにカナダや中国の研究チームが、学術誌のAdvanced Composites and Hybrid Materialsに掲載された論文で、「光を熱に変換して温かくなる特殊繊維」を開発したと報告しました。
寒い日に「服が勝手にあたたまったらいいのに」と思ったことはありませんか？そんな夢のような技術が、現実になりつつあります。カナダと中国の研究チームが、太陽の光で温まる特別な繊維を開発しました。この繊維は、電池や電源を使わずに、太陽光を吸収して発熱する仕組みです。
登山や寒い地域で働く人の服に使えば、外部の電源がなくても快適に過ごせます。さらに、この繊維は環境にもやさしく、二酸化炭素の排出を減らすことにも役立ちます。
この新しい技術の仕組みや使い道、課題について見てみましょう。
光熱変換繊維のしくみ
この特別な繊維には「光熱活性ポリマー」という素材が使われています。これには次のような成分が含まれています。
- ポリアニリン（PANI）：太陽の光を集めて熱に変える。
- ポリドーパミン（PDA）：いろいろな種類の光を吸収し、温かさをキープする。
このしくみによって、電気なしで繊維自体が温まるのです。また、温まると色が変わる特別な染料も使われており、どれくらい温かくなっているかを目で見て確認できます。
どれくらい温かくなるの？
研究チームが行った実験では、この繊維で作ったマフラーを日光にさらしたところ、たった10分で20℃から53.5℃まで温度が上がりました。これは寒い場所でとても役に立つ性能です。
さらに、この繊維は柔らかく伸び縮みしやすく、丈夫で長持ちします。実験によると、25回以上洗濯しても発熱する機能が落ちず、約3年間は普通に使えることが確認されています。
他の発熱素材と何が違うの？
この技術には、今までの発熱素材にはない次のようなメリットがあります。
- 軽い：金属を使った素材より軽く、着心地がよい。
- 電気がいらない：電池を使う発熱衣類と違い、ランニングコストがかからない。
- 環境にやさしい：再利用できる素材で作られており、ゴミを減らせる。
どんな場面で使えるの？
この繊維は、いろいろな場面で活用できることが予想されます。
- 防寒着：寒い地域で働く人や登山をする人の服。
- 医療：体温が下がりすぎるのを防ぐための衣類。
- ペット用品：寒い場所でも快適に過ごせるペット用ウェア。
- 災害対策：寒い場所での避難生活に役立つ。
- アウトドアスポーツ：スキーやキャンプのギア。
実用化への課題
ただし、この技術をみんなが使えるようにするには、いくつか解決しないといけない問題があります。
- コストが高い：今はまだ生産コストが高く、安く作る方法が必要。
- 大量生産の仕組み：たくさん作るための工場の技術が必要。
- 安全性の確認：長く使ったときに体に害がないか検証する必要がある。
- 環境への影響：本当に環境によいか、より詳しく調べる必要がある。
今、研究機関や企業では、低コストで作れる方法を開発したり、大量生産のための試験を進めています。すでに試作品を発表している企業もあり、これからさらに進化することが期待されています。
まとめ
今回紹介した光熱変換繊維は、新しい防寒技術として大きな可能性を持っています。
- 太陽光を使って、電気なしで温まる新しい繊維。
- たった10分で30℃以上温度が上昇。
- 軽くて環境にやさしく、使い勝手が良い。
- 防寒着、医療、アウトドアなど幅広い用途に活用可能。
- 価格や生産の課題があるが、研究開発が進められている。
この技術は、持続可能なエネルギー活用にも貢献する重要な一歩です。興味がある人は、カナダのブリティッシュコロンビア大学や中国の清華大学の研究成果、または太陽光エネルギーを活用する企業（SolTech EnergyやHeatweaverなど）の取り組みを調べてみるとよいでしょう。未来のあったか繊維の可能性を、一緒に考えてみませんか？