電気自動車(EV)で知られるテスラは、2026年1月21日に人型ロボット「Optimus Gen 3」の量産を開始しました。CEOのイーロン・マスク氏は、アメリカ・カリフォルニア州のフリーモント工場だけで年間100万台規模の生産を目指すと発表しています。人間と同じ形をしたロボットが、工場や物流施設で実際に働く未来が、研究段階を超えて現実になりつつあります。

テスラ:EVからロボットへ広がる事業領域

テスラは、電気自動車(EV)とクリーンエネルギー機器を中心に事業を展開するアメリカのテクノロジー企業です。「モデル3」「モデルY」などのEVに加え、家庭用蓄電池やソーラーパネルも手がけています。本社はテキサス州オースティンにあり、2003年に創業されました。

テスラの特徴は、ハードウェアだけでなくソフトウェアを重視してきた点です。無線通信によるソフトウェア更新(OTA)や自動運転機能の開発を進め、「車を走るコンピュータ」として進化させてきました。このAIとソフトウェアの蓄積が、人型ロボットOptimusの開発にも生かされています。

Optimus Gen 3とは──人間サイズで働く汎用ロボット

Optimus Gen 3は、工場などで人の代わりに危険・単調・重労働を担うことを目的とした汎用人型ロボットです。身長は約170cm、体重は約57kgで、人とほぼ同じ作業空間で動けるサイズに設計されています。最大で約20kgの荷物を持ち運ぶことができます。

バッテリー容量は2.3kWhで、1回の充電あたり10〜12時間の連続稼働が可能です。これは工場の1シフト分に相当します。両手には22自由度(関節の動きの数)があり、指や手首を細かく制御できるため、工具を使う作業や小さな部品を扱う作業にも対応します。

使われている技術──自動運転AIの応用

Optimus Gen 3には、全身に28個のアクチュエータ(関節用モーター)と多くのセンサーが搭載されています。カメラ8台に加え、足裏の力センサーや指先の触覚センサーを組み合わせることで、人間に近い歩行やバランス制御を実現しています。

頭脳部分には、テスラ車の自動運転システム「FSD(Full Self-Driving)」と同系統のAIコンピュータが使われています。カメラ映像をもとに周囲を立体的に認識し、自分で移動経路や作業手順を考えて動きます。

このAIでは、ニューラルネットワークという計算の仕組みが使われています。ニューラルネットワークは、多数の画像や動作例から「物の見分け方」や「正しい動き方」を学習する方法です。人が一つ一つ動きを教えなくても、ロボットが経験から判断できるようになる点が特徴です。

工場・物流が主な舞台

Optimus Gen 3の主な利用先は、工場や物流施設です。部品の運搬、ラインへの供給、検査、清掃など、同じ動作を長時間くり返す作業が想定されています。人間向けに作られた通路や棚、工具をそのまま使えるため、大規模な改修をせずに導入できる点が利点です。

テスラは2026年末までに、自社のギガファクトリーや初期の産業パートナーの施設で、数千台規模のOptimusを稼働させる計画を示しています。

価格とライバル企業──世界で進む量産競争

イーロン・マスク氏は、Optimusの量産時の価格を1台あたり2万〜3万アメリカドル(約316万〜474万円 ※1ドル=158円で試算)を目標に掲げています。これは従来の人型ロボットと比べて低い水準です。

人型ロボット市場は、2025年から2030年にかけて年率30〜40%で成長すると予測されています。アメリカではテスラのほか、ボストン・ダイナミクスの「Atlas」や、Figure AIの「Figure」シリーズなどが開発を進めています。
一方、中国では大量生産と低価格化が進み、2025年には約1万3000台の人型ロボットが導入され、世界全体の8割以上を占めたと報告されています。

各国・地域の動向
  • アメリカ
    代表企業・ロボット名:Tesla「Optimus」、Figure AI「Figure 01/02」、Agility Robotics「Digit」、Apptronik「Apollo」、Boston Dynamics「Atlas」など。
    特徴:工場や物流向けの実務ロボットにフォーカスし、AIとセンサー技術を活かした「周囲の認識」と「具体的な作業」を一体化した設計が強み。
  • 中国
    代表企業・ロボット名:Agibot、Unitree、UBTECH「Walker」、Lejuなど。
    特徴:大量生産と低価格化で存在感が大きく、2025年の人型ロボット出荷台数で世界トップ水準にあると報告されている。
  • 日本・韓国
    代表企業・ロボット名:トヨタ、ホンダ、川田ロボティクス、ソフトバンク・ロボティクス「Pepper / NAO」、韓国Hyulim Robotなど。
    特徴:介護・接客・教育などサービスロボット分野での経験が長く、人との対話やふるまいを設計するインタラクション技術に強み。
  • ヨーロッパ
    代表企業・ロボット名:PAL Robotics(スペイン)、自動車メーカーとの共同開発プロジェクトなど。
    特徴:既存の産業用ロボットとの連携や安全性を重視した導入が多く、医療・リハビリなど専門性の高い分野への応用が進んでいる。
まとめ
  • テスラは2026年に人型ロボットOptimus Gen 3の量産を開始
  • Optimusは身長約170cmで、人と同じ工場空間で10〜12時間働ける設計
  • 自動運転で培われたAI技術が、人型ロボットの頭脳として使われている
  • 人型ロボット市場は急成長しており、中国とアメリカが中心

人型ロボットの実用化は、人手不足を補うだけでなく、働き方そのものを変える可能性を持っています。一方で、安全性の確保や、仕事の役割分担をどう考えるかといった課題も残されています。
ロボットが身近な存在になる社会で、人はどのような仕事を担い、どのようにロボットと協力していくのでしょうか。人型ロボットOptimusは、その問いを考えるきっかけとなる存在だと言えます。