CATL Launches Mass-Produced Sodium-Ion Battery

CATL introduces the world’s first mass-produced sodium-ion battery for commercial vehicles, advancing cost-efficient and sustainable energy storage.

電気自動車(EV)が広がる一方で、「冬になると電池の減りが早い」「寒いと充電しにくい」という課題が指摘されてきました。

2026年1月、世界最大級の電池メーカーであるCATL(Contemporary Amperex Technology Co., Limited)が、こうした課題に対応するナトリウムイオン電池を商用EV向けに量産開始しました。これまで研究段階とされてきたナトリウムイオン電池が、トラックやバンといった実用車両で使われ始めた点は大きな転換点です。

今回は、ナトリウムイオン電池の特徴と、EVや社会への影響を整理してみましょう。

−30℃でも充電できる「寒冷地対応電池」

CATLは、中国・福建省寧徳市に本社を置く電池メーカーで、EV用電池の世界シェアでトップクラスとされています。CATLが今回量産を開始したのは、小型トラックや配送用バンなどの商用車向けナトリウムイオン電池です。製品は「Tianxing II(天行II)」シリーズとして展開されています。

このナトリウムイオン電池の最大の特徴は、低温環境での性能です。CATLによると、マイナス30℃の環境でも充電が可能で、さらにマイナス40℃でも電池容量の約90%を維持できるとされています。従来のリチウムイオン電池は、低温下で性能が大きく低下するケースが多く、寒冷地ではEV導入の壁となってきました。ナトリウムイオン電池は、こうした課題に対応する技術として位置づけられています。

ナトリウムイオン電池とは何か

ナトリウムイオン電池は、電池の中でイオンとして移動する材料に「ナトリウム」を使う二次電池です。現在主流のリチウムイオン電池は、リチウムを用いて高いエネルギー密度を実現しています。一方で、リチウムは資源が限られており、価格変動の影響を受けやすい点が課題とされています。

ナトリウムは、海水や岩塩などに多く含まれ、地球上に豊富に存在する元素です。そのため、資源面での制約が小さく、将来的なコスト低減が期待できるとされています。CATLが量産するナトリウムイオン電池は、エネルギー密度175Wh/kgとされており、商用車用途として実用的な水準に達しています。

リチウムイオン電池との役割の違い

リチウムイオン電池とナトリウムイオン電池は、競合する技術というよりも、用途によって使い分けられる関係にあります。リチウムイオン電池は、軽量で高エネルギー密度という特性を生かし、長距離走行が求められる乗用EVや高性能車に向いています。

一方、ナトリウムイオン電池は、エネルギー密度ではリチウムイオン電池に及ばないものの、低温性能や耐久性、資源の豊富さに強みがあります。そのため、決まったルートを走る配送トラックや業務用バンなど、短〜中距離中心の商用EVに適しているとされています。

世界トップ企業CATLの電池戦略

CATLは2011年設立の企業で、テスラやトヨタ自動車を含む多くの自動車メーカーに電池を供給しています。CATLは、ナトリウムイオン電池だけでなく、リチウムイオン電池でも超急速充電対応モデルなどを同時に開発しています。

同社は、一つの電池技術に依存するのではなく、用途に応じて複数の電池を使い分ける「二本立て」の戦略を取っています。ナトリウムイオン電池は、まず商用車から導入され、2026年後半以降には乗用車やエネルギー貯蔵システムへの展開も計画されています。

まとめ
  • CATLがナトリウムイオン電池を商用EV向けに量産開始
  • マイナス30℃でも充電可能な低温性能が、大きな特徴
  • ナトリウムは資源が豊富で、将来的なコスト低減が期待されている
  • 電池は用途ごとに使い分ける時代へ移行している

ナトリウムイオン電池の実用化は、EV技術の進化が「性能競争」だけでなく、「使われる環境」や「社会コスト」に目を向け始めたことを示しています。寒冷地でも使いやすく、資源面で制約の少ない電池が普及すれば、物流の電動化やエネルギーの安定供給にも影響を与えます。
化学や物理で学ぶ元素の性質が、社会インフラや経済の形を変える可能性があります。身の回りの製品が、どのような材料で作られているのかを調べることが、未来の技術を考える第一歩になります。