マイクロプラスチック、南極大陸の新雪から見つかってしまう | ギズモード・ジャパン
もはや見つかっていない場所を探すほうが難しいんじゃないかってくらい、どこにでも行ってしまうマイクロプラスチック。新たな研究によると、南極由来と思われるマイクロプラスチックが南極大陸の新雪の中から見つかってしまいました。
南極ロス島の新しく降った雪(新雪)から、平均29.4粒/リットルのマイクロプラスチックが見つかりました。最も多かったのはPET(ペットボトルなどの素材)で、糸くずのような繊維が中心です。研究基地の近くほど数が多く、風に乗った長距離輸送も重なっていると考えられます。
極地での発見は、私たちの暮らしと地球のつながりをどう映しているのでしょうか。
なぜ南極の“新雪”にマイクロプラスチックが?
南極の新雪で初めてマイクロプラスチックが確認されました。新雪は最新の降下物を反映するため、今この瞬間の大気の状態がわかります。平均は29.4粒/リットル。研究基地の近くでは約47粒/リットルまで増えました。
暗い色の粒は太陽光を吸収しやすく、雪どけ(アルベド低下)を早める可能性があります。
どう測って、なにがわかった?
2019年末、ロス島周辺の19地点で表面約2cmの新雪を採取しました。顕微鏡とµFTIR(ミュー・エフティーアイアール:赤外分光)で種類を特定したところ、13種類のポリマーを確認。PETが最多で、形は繊維が中心でした。基地近くで濃度が高かったことから、衣類・旗・装備などの“摩耗(すり減り)”が身近な発生源になっているとわかります。
一方、気流の解析では数千kmを運ばれる可能性も示され、地域の発生と遠くからの運ばれ方が両方ある構図です。

プラスチックはどう作られるか
プラスチックは原油から取り出したナフサを高温で分解し、エチレンやプロピレンなどの基礎原料を得て重合します。重合で得た樹脂はペレット化され、溶融成形で製品になります。日本ではナフサの一部を輸入し、ナフサから多様な樹脂を製造しています。
暮らしにどんな影響がある?
- 雪どけリスク:暗い粒が増えると、氷や雪がとけやすくなります。観測路や基地の維持費(除雪や保守)が増える可能性があります。
- 発生源対策:合成繊維の衣服や作業用品から繊維が出ます。洗濯時のフィルターや、摩耗しにくい素材の採用で減らせます。
- 設備投資:下水・排水設備に“繊維を捕まえる仕組み”を入れると、施設費はかかりますが流出は減ります。標準的な観測方法を共有することも重要です。
まとめ
- 南極の新雪でマイクロプラスチックを初確認
- PETが最多、形は繊維が中心。基地近くで濃度が上がった
- 身近な発生(衣類や装備の摩耗)と、風による長距離輸送が同時に起きている
- 対策は、排水の捕集、素材の見直し、観測の標準化の3本柱
今日からできることは小さくても効果があります。合成繊維の洗濯には目の細かい洗濯ネットやフィルターを使う。屋外での作業旗やユニフォームは、繊維が抜けにくい素材を選ぶ。学校・自治体は観測データを共有し、学習教材として扱う。研究現場は排水設備と採取手順の標準化を進める。
南極の“新雪”が示したのは、地球は一つにつながっているという事実です。あなたの家庭や学校、地域で、まず一つだけ減らせるマイクロプラスチックを選んでみましょう。
