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2025年6月、日本の宇宙ベンチャーispaceが挑戦した月面着陸ミッション「RESILIENCE(レジリエンス)」は、着陸直前に通信が途絶し、最終的に月面へ衝突したと見られています。しかし、失敗からこそ得られる技術や知見があります。
ミッションの目的や失敗原因、月探査技術の難しさ、そして宇宙ビジネスの未来について考えてみましょう。宇宙開発の舞台裏を知ることで、未来の技術や経済の新しい形が見えてくるはずです。

ispace「RESILIENCE」ミッションの目的とは

民間初の月面着陸を目指して
ispaceは、2025年に「RESILIENCE」ランダーを打ち上げ、日本とアジアの民間企業として初めて月面着陸を成功させることを目指しました。ミッションのゴールは、月面への安全な着陸を実証し、将来の月面輸送サービスやデータサービス事業の基盤を築くことです。
また、着陸技術を学ぶことで、大企業だけでなくスタートアップでも月探査が可能になる道を開こうとしました。

月面資源探査とシスルナ経済圏構築
ランダーには、小型探査車「TENACIOUS(テネシアス)」など複数の機器が載せられていました。これらを使い、月面の地下にある「水の氷」や鉱物資源を調べる計画でした。月の水は、飲料水やロケット燃料の材料にできるため、将来の宇宙活動にとって重要です。
ispaceは、地球と月を結ぶ新しい経済圏「シスルナ経済圏」を作ることも目指し、資源を活用したビジネスを展開したいと考えています。

なぜ失敗したのか?月面着陸の難しさ

測距センサーの遅れと減速不足
「RESILIENCE」ランダーが月面に衝突した主な原因は、レーザー式の測距センサー(レーザーレンジファインダー)の計測値取得が遅れたことです。そのため、ランダーは自分が月面にどれだけ近づいているかを正確に知ることができませんでした。結果として、エンジンによる減速が不足し、予定より速い速度で月面に降りてしまい、硬い衝突(ハードランディング)を招いたと推測されます。

月面レゴリスの影響と複合的な技術課題
さらに、月面の細かい砂や粉「レゴリス」がレーザー光を乱反射させ、測距を妨げた可能性があります。また、機体の姿勢制御やエンジン噴射、通信システムなど、複数の技術が同時に連携する必要があり、どれか一つでも問題が起きると着陸は難しくなります。
ispaceは現在、着陸過程の記録データを解析し、より詳しい原因究明を進めています。

月探査技術と宇宙ビジネスの未来

月の「水の氷」がもたらす可能性
月の極地や地下には「水の氷」が隠れていると考えられています。この氷は、将来の宇宙飛行士用の飲料水や生活用水、さらにはロケット燃料の原料として活用できます。もし月で水を手に入れられれば、地球から水を運ぶコストを大きく減らせるため、月面基地の建設や長期滞在が現実に近づきます。
現在、はやぶさ2などの探査機で小惑星から水や資源を採取する研究も進んでおり、宇宙資源開発への期待が高まっています。

世界の競争と日本のチャレンジ
アメリカのSpaceXやBLUE ORIGIN、中国の国家航天局や商業企業、インドのISROなど、多くのプレイヤーが月面探査に参入しています。日本ではJAXAの「SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)」プロジェクトが2025年内の着陸を目指しており、ispaceもこれに続く形です。
このように、世界は民間と国の両方で競争が激化しており、技術の進歩がビジネスチャンスを拡大しています。

関連ニュース紹介

最近では、アメリカの民間企業が新たに月面着陸を達成したとの報道がありました。また、JAXAはSLIMプロジェクトで、月面の地形や水資源を探る計画を進めています。これらのプロジェクトは、月探査や宇宙ビジネスの拡大を裏付けるものです。興味がある人は、各プロジェクトの公式ウェブサイトやニュースをチェックしてみましょう。

まとめ
  • ispace「RESILIENCE」ミッションは、測距センサーの遅れや月面レゴリスの影響によって減速が不足し、月面衝突となった可能性
  • 月の「水の氷」は、宇宙飛行士の飲料水やロケット燃料の原料として注目されている
  • 世界中の民間企業や国が月面探査に取り組み、競争が加速
  • 日本ではJAXAのSLIMやispaceなどが技術革新を進め、宇宙ビジネスを切り拓く
  • 成功も失敗も次の技術発展につながり、宇宙資源開発は経済やビジネスの新しい仕組みを生み出す可能性

宇宙開発は一朝一夕で成し遂げられるものではありません。失敗から学ぶことで、新しい技術やビジネスモデルが生まれます。月面に眠る水の氷を活用することで、地球からの輸送コストを削減し、新しい産業が生まれる可能性があります。また、宇宙で得た技術は地上の産業や環境問題の解決にも応用できます。
もし宇宙や技術に興味があるなら、最新の宇宙ニュースを追いかけ、宇宙ビジネスの仕組みやマーケットを自分で調べてみましょう。将来、宇宙技術で世界を変えるエンジニアや起業家になるヒントがきっと見つかります。