「円周率って3.14だけじゃないの?」と疑問に思ったことはありませんか? 実は円周率は、どこまでも続く終わりのない数字です。
2025年、カナダのLinus Media Groupが300兆桁という驚異の円周率計算に成功し、世界記録を更新しました。このチャレンジの裏には、どんな最先端技術が使われていたのでしょうか? 本記事では、円周率の意義や使われたコンピューター技術、そしてその社会的な意味について、見てみましょう。
円周率とは?なぜこんなに計算するの?
円周率(パイ、π)は、円の直径に対する円周の長さの比を示す数学定数です。学校では「3.14」と教わりますが、実際には無限に続く不規則な数列です。この無限の数字をどこまで正確に計算できるかは、コンピューターの性能や信頼性を確かめる「ベンチマーク(性能試験)」として活用されています。
なぜ300兆桁も計算したのか? その目的とは
今回の300兆桁の円周率計算は、単なる記録更新ではありません。最大の目的は、コンピューターや記憶装置の「計算力」「信頼性」「耐久性」を証明することです。円周率のような終わりのない計算では、少しのミスもすぐに発見できるため、技術者たちにとっては絶好のテスト材料となっています。
記録を支えた3つの最新技術
y-cruncherとマルチスレッド計算
使われたソフトは「y-cruncher」です。このソフトは、複数のCPUを同時に動かす「マルチスレッド」機能を活用し、膨大な計算を効率よくこなします。また、計算ミスを自動で発見・修正する機能も備えています。
高性能CPUと大容量メモリ
使用されたCPUは、192コアを搭載する「AMD EPYC 9684X」。メモリは3TB(テラバイト)にも及びます。これだけの計算能力がなければ、300兆桁の計算は不可能でした。
超大容量SSDとネットワーク
記憶装置には、キオクシア製の高速SSDが合計2.2PB(ペタバイト)使われました。これはスマートフォンの写真約3億枚分の容量に相当します。これらのSSDは分散ストレージとして225日間、1度も故障せず稼働し続けました。

円周率計算はどんな役に立つの?
「円周率をたくさん計算して、何がすごいの?」と思うかもしれません。しかし、この挑戦はAI開発や気象予測、医療シミュレーションなど、大量のデータ処理が必要な分野にも応用されています。Googleも過去にクラウド技術を使って100兆桁の円周率計算を成功させたことがあります。
注目の関連技術:量子コンピューターの可能性
最近では、量子コンピューターという新しい技術が注目されています。従来のコンピューターが苦手とする膨大な計算を一瞬で行える可能性があり、将来は円周率の記録もさらに塗り替えるかもしれません。
まとめ
- 円周率は終わりのない数字で、コンピューター性能のテストに使われる
- 2025年、Linus Media Groupが300兆桁の計算でギネス記録を更新
- 使用された技術:y-cruncher、AMD EPYC CPU、大容量SSDなど
- 225日間一度も故障せずに安定動作を続けたことが大きな成果
- 円周率計算はAIや医療、気象分野などでも活用されている
「なんでこんなに長い数字を求めるの?」と思うことも、社会の技術や経済の進化を知る入り口になります。円周率の計算は、私たちの生活を支える技術の進歩を映し出す鏡です。スマホやインターネット、ゲームに使われている技術も、こうした研究の延長にあります。あなたも、自分の身の回りにあるテクノロジーがどう発展してきたのか、調べてみませんか?