300兆桁の「最も正確な円周率の値」が算出。最後の桁は…… - PC Watch

 テクノロジー専門のYouTubeチャンネルを運営するLinus Media Groupは、300兆桁の円周率を計算し、「最も正確な円周率の値」としてギネス世界記録を樹立した。

2025年5月、驚きのニュースが世界を駆け巡りました。
カナダのLinus Media Groupと日本のキオクシアが協力し、円周率を300兆桁まで計算してギネス世界記録を更新したのです 。
私たちが学校で習う「3.14」の先には、果てしない数の宇宙が広がっています。この途方もない計算を成功させたのは、どのような技術なのでしょうか。その裏側には、進化し続ける半導体と、限界に挑むエンジニアたちの情熱がありました。
今回は、この大記録を支えたテクノロジーの秘密に迫ります。

なぜ300兆桁も計算するの?コンピューターの「健康診断」

「円周率を計算して何になるの?」と不思議に思うかもしれません。実は、円周率の計算はコンピューターの性能や信頼性を測るための、最も過酷な「ベンチマーク(性能テスト)」の一つなのです 。

終わりのない計算を何ヶ月も続けることは、マラソンを全力疾走し続けるようなものです。もし計算中に一度でもエラーが出たり、部品が故障したりすれば、記録は無効になります。つまり、300兆桁という記録は、単なる計算速度だけでなく、そのシステムがどれほど頑丈で正確かを示す「信頼性の証明」になるのです。
この技術は、膨大なデータを扱う生成AIや、複雑な気象シミュレーションの安定性を高めるためにも役立っています 。

ギネス記録を達成した「モンスターマシン」の正体

今回の記録更新に使われたコンピューターは、家庭用パソコンとは比べものにならないスペックを持っています。

192個の頭脳を持つCPU
計算の中心となるCPUには、「AMD EPYC 9684X」が採用されました 。一般的なパソコンのコア(頭脳)数は数個から十数個ですが、このCPUはなんと192個ものコアを搭載しています。これにより、膨大な計算を同時に並行して処理することが可能になりました。

写真3億枚分!2.2ペタバイトの超巨大SSD
今回のプロジェクトで特に重要な役割を果たしたのが、データを保存するストレージ(記憶装置)です。使用されたのはキオクシア製のエンタープライズ向けSSDで、その総容量は2.2PB(ペタバイト)に達します 。これはスマートフォンの写真(約7MB)に換算すると、およそ3億枚分に相当する膨大な量です。
円周率の計算では、途方もない桁数のデータを高速に読み書きする必要があるため、HDDよりも高速なSSDの性能がカギを握っていました

量子コンピューターは円周率も変える?
計算技術の進化は止まりません。最近では、従来のコンピューターとは異なる原理で動く「量子コンピューター」も注目を集めています 。現時点では特定の計算が得意な段階ですが、将来的には円周率のような計算でも、今のスーパーコンピューターを凌駕する日が来るかもしれません。

225日間の死闘!一度も止まらなかった驚異の耐久性

300兆桁の計算にかかった時間は、なんと225日間 。約7ヶ月半もの間、コンピューターは一瞬も休まず、フル稼働し続けました。

使用された計算ソフト「y-cruncher」は、マルチスレッド機能を駆使して効率よく計算を進めますが、ハードウェアへの負荷は計り知れません 。熱や振動、データの読み書きエラーなど、数え切れないトラブルの種があります。
しかし、今回のシステムは期間中に一度も故障することなく完走しました。特に、2.2PBものSSDが分散ストレージとして安定稼働し続けたことは、データセンターやクラウドサービスの未来にとっても明るいニュースと言えるでしょう 。

ちなみに、算出された300兆桁目の数字は「5」だったそうです 。

まとめ
  • 2025年、Linus Media Groupとキオクシアが円周率300兆桁を達成しギネス記録を更新
  • 記録の鍵は、192コアのCPUと2.2PBのキオクシア製SSDによる圧倒的な処理能力
  • 225日間ノンストップで稼働し続けたことで、システムの信頼性と耐久性が証明された

「3.14」の続きを知るために、世界中の技術者が最先端の技術を注ぎ込んでいるなんて、少しワクワクしませんか? 今回の記録は、単なる数字の羅列ではなく、人類が作り出した道具の進化の証です。
普段使っているスマホやゲーム機の中にも、こうした極限の挑戦で培われた技術が息づいています。
技術が進化する中で、「人の判断」や「好奇心」が果たす役割はどう変わっていくのでしょうか? 次に世界を変える技術を見つけるのは、あなたかもしれません。