宇宙に取り残された宇宙船が、なんと半世紀以上も地球を回り続けていたことをご存じですか?1972年に旧ソ連が打ち上げた金星探査機「コスモス482号」の残骸が、2025年5月に大気圏へ再突入し落下する可能性があると話題になっています。
なぜ今になって落下するのか?そして、増え続けるスペースデブリ(宇宙ごみ)にどう立ち向かうのか。日本企業が挑む最新技術とともに、宇宙開発の課題を見てみましょう。
コスモス482号とは? 半世紀を漂った宇宙船
コスモス482号は、1972年に旧ソ連が金星探査のために打ち上げた宇宙船です。しかし、ロケットのエンジンに不具合が生じ、金星に向かう軌道に乗れませんでした。その結果、コスモス482号は地球の軌道上を漂うこととなり、一部の破片は大気圏で燃え尽きたものの、着陸機とロケットの上段は今もなお地球を周回し続けています。
地球への落下リスクは? 安全性の現状
宇宙船の残骸が地球に落下するリスクは、実は非常に低いとされています。なぜなら、地球表面の約7割が海であり、さらに大気圏に突入する際には多くの物体が高温で燃え尽きてしまうからです。
しかし、コスモス482号の着陸機は金星探査用に設計された非常に頑丈な構造を持っており、一部が地上に落ちる可能性も否定できません。それでも、人的被害の確率は隕石の衝突レベルといわれています。
宇宙船やロケットの落下は珍しくない?
実は過去にも、宇宙船やロケットの残骸が地球に落下した事例があります。
たとえば1979年、アメリカの宇宙ステーション「スカイラブ」がオーストラリア西部に落下。2020年には中国の大型ロケット「長征5号B」の部品がアフリカや大西洋上に落ちました。さらに2024年には、国際宇宙ステーションから捨てられた部品がアメリカ・フロリダ州の住宅に落下した事例もあります。いずれも人的被害はほとんどなく、影響は限定的でした。

増え続ける宇宙ごみと日本の技術革新
スペースデブリ(宇宙ごみ)とは、役目を終えた人工衛星やロケットの破片など、地球周辺を漂う不要な物体のことです。これらが増え続けることで、現役の人工衛星や宇宙ステーションと衝突するリスクが高まり、宇宙開発の大きな妨げとなっています。
日本の宇宙ベンチャー「アストロスケール」は、2024年に「ADRAS-J」という衛星を打ち上げ、宇宙ごみに安全に近づいて観測する世界初の実験を成功させました。
今後はデブリを実際に捕まえて除去する技術の実用化を目指しています。また、「Orbital Lasers」はレーザー光でデブリの動きを制御し、軌道から外す新しい技術を研究中です。JAXA(宇宙航空研究開発機構)も民間企業と協力し、宇宙ごみ対策の実証プロジェクトを進めています。
宇宙ごみの地上落下が現実に
2024年3月、国際宇宙ステーションから廃棄された部品がアメリカの住宅に落下しました。このようなニュースが増える中、宇宙ごみ問題への関心と対策の必要性が一段と高まっています。
まとめ
- コスモス482号は金星探査を目指して打ち上げられたが、地球周回軌道に取り残された
- 着陸機は耐熱構造により、一部が地上に落下する可能性もある
- 過去にも宇宙船やロケットが地上に落下した例はあるが、人的被害は極めて少ない
- 日本企業はスペースデブリ除去の最先端技術を開発し、実証実験も進行中
宇宙開発やスペースデブリ対策には、莫大な資金と高度な技術が必要です。こうした課題に挑む日本企業の取り組みは、新たな産業を生み出す原動力となります。今後は、宇宙ごみ除去サービスやリスク評価ビジネスなど、宇宙関連の新しい仕事も増えると期待されています。
みなさんも、宇宙技術が社会や経済にどのような影響を与えるか、ぜひ調べたり考えたりしてみてください。宇宙の未来は、あなたの興味や探究心によってさらに広がっていきます。