全樹脂電池APB 破産手続き 経営体制混乱で事業断念|テレ東BIZ
次世代電池の開発を手掛けるAPBが、福井地裁から破産手続きの開始決定を受けたことがわかりました。負債総額はおよそ34億円です。APBは、日産で電気自動車向けの蓄電池技術を開発した堀江英明氏が創業し、発火リスクが少ないとされる「全樹脂電池」と呼ばれる次世代型の車載用電池を開発していました。しかし、2024年6月に経営体制の混乱から堀江氏が解任され、新体制のもとで開発の継続を模索していましたが、資金繰りが悪化し、事業を断念したとみられます。
電池技術の進化は、電気自動車や再生可能エネルギーの普及を支えるカギです。その中でも、日本発の「APB破産後も続く次世代電池の革新」は、高い安全性と自由な形状設計ができる点で注目されてきました。
しかし、2025年4月、この技術を開発していたAPB社が破産。期待の技術はなぜつまずいたのか?そして全樹脂電池に未来はあるのか?一緒に探ってみましょう。
全樹脂電池とは?
金属を使わない安全な電池
全樹脂電池は、正極や負極、集電体などの主要部品に金属ではなく樹脂(プラスチック)を使った新しいタイプのリチウムイオン電池です。電極や電解質にはゲル状の高分子樹脂を使い、液漏れや発火リスクが大幅に低減されています。
バイポーラ構造による高効率
この電池の特徴の一つが「バイポーラ構造」です。集電体の両面に正極と負極を配置し、複数のセルを縦に積むことで電気の流れが短くなり、効率よくエネルギーを取り出せます。形状の自由度も高く、軽量化にも貢献します。
製造の簡略化とコスト削減
金属加工や乾燥工程が不要なため、生産プロセスが簡素化され、製造コストの削減も期待されていました。これにより、量産化に向けた期待も高まっていました。
応用分野と期待される用途
大型蓄電池と再生可能エネルギー
火災リスクが低く、大容量の蓄電が可能な全樹脂電池は、ビルやデータセンター、工場などの大型蓄電池に最適です。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを貯める用途でも期待されています。
電気自動車やモバイル機器
軽量かつ形を自由に設計できるため、電気自動車や電動バイク、スマートウォッチ、ドローンなどの分野でも活用が検討されています。非常用電源や医療機器のバックアップ電源としても、安全性の高さが評価されています。

なぜAPBは破産したのか?
量産化の壁と資金難
革新的な構造ゆえに、生産設備をゼロから開発する必要があり、多額の初期投資が必要でした。APBは資金調達に苦しみ、経営の混乱やリストラが重なった結果、破産に追い込まれました。
技術は引き継がれる可能性も
APBの技術は、大学や他の企業との共同研究を通じて蓄積されており、他社が技術を引き継ぐことも可能です。実用化への道は、まだ閉ざされたわけではありません。
次世代電池の潮流
全樹脂電池のほかにも、全固体電池やナトリウムイオン電池など、新たな電池技術が続々と登場しています。特に全固体電池は、より高い安全性と長寿命が見込まれ、トヨタなど大手自動車メーカーも研究を進めています。
技術革新は、社会やビジネスの仕組みを大きく変える力を持っています。
まとめ
- 全樹脂電池は高い安全性と形状の自由度を持つ次世代電池
- バイポーラ構造により効率的なエネルギー活用が可能
- APB破産の背景には資金調達と量産化の困難がある
- 技術は他社に引き継がれ、今後の実用化も期待できる
- 次世代電池競争は続き、エネルギー社会を変える原動力となる
これからの社会では、エネルギーを安全かつ効率よく使う技術がますます重要になります。全樹脂電池のように期待された技術がなぜ苦戦するのかを知ることは、経済やビジネスの本質を考えるヒントになります。みなさんも、身近なニュースや技術の背景を探ることで、社会の変化を見抜く力をつけていきましょう。