積水化学工業株式会社のプレスリリース(2024年12月18日 14時00分)ペロブスカイト太陽電池付き防音壁の実証実験について
新幹線が走るたびに発電し、駅や沿線の電力をまかなう—そんな未来が現実になるかもしれません。JR東海は、「ペロブスカイト太陽電池」という新技術を活用し、新幹線の防音壁を使って発電する実験を開始しました。
この太陽電池は、紙のように薄く、軽く、曲げることも可能です。従来のシリコン太陽電池とは異なり、設置できる場所の自由度が高いため、交通インフラや都市部のビルなど幅広い分野での活用が期待されています。
では、なぜJR東海はこの実験を始めたのでしょうか?また、この技術は私たちの未来にどのような影響を与えるのでしょうか?

ペロブスカイト太陽電池とは?
ペロブスカイト太陽電池は、次世代の太陽電池として世界中で注目されています。欧州や米国でも研究が進められており、特にドイツやアメリカでは実用化に向けたプロジェクトが進行中です。
主な特徴
- 薄くて軽量:一般的なシリコン太陽電池の約10分の1の重さ。
- 柔軟性がある:曲げたり、折りたたんだりできる。
- 製造コストが低い:シリコンを使わず、安価に大量生産が可能。
- 曇りの日でも発電可能:従来の太陽電池よりも発電効率が高い。
また、日本が世界の約3割を生産するヨウ素を活用できるため、国産技術としての成長も期待されています。
JR東海と積水化学工業の共同プロジェクト
JR東海は、積水化学工業と提携し、新幹線の防音壁にペロブスカイト太陽電池を設置する実験を行っています。
実験の目的
- 発電量の測定
- 耐久性の検証
- 取り付けや交換の容易さの確認
新幹線の路線は東京から大阪まで約500km、防音壁の総延長は約650kmにもなります。この広大なスペースを活用することで、大規模な発電が可能になるかもしれません。
小牧研究施設での実証実験
このプロジェクトは、2025年1月からJR東海の小牧研究施設で本格的な検証が始まりました。
主な実験内容
- 晴天・曇天時の発電量比較
- 新幹線の振動や風圧への耐久性テスト
- 施工の容易さや保守性の確認
この実験により、発電量の安定化や耐久性の向上など、実用化に向けた具体的な課題を明確にし、それらの技術最適化を進めています。

技術的な課題と解決策
ペロブスカイト太陽電池は多くのメリットを持つ一方で、いくつかの課題もあります。
主な課題と対策
- 寿命が短い(10~20年) → 交換しやすいモジュール設計を採用。
- 水に弱い → 防水加工を施し、耐久性を向上。
- 発電効率の改善 → 新素材や製造方法の改良を進める。
JR東海は、太陽電池を簡単に交換できる「ガイドレール構造」を開発し、長期間の運用を可能にする仕組みを構築しています。
未来への可能性
この技術が実用化されれば、新幹線の駅で使用する電力を自給できる可能性があります。また、新幹線以外の用途にも応用が広がるでしょう。
応用例
- ビルの窓:発電しながら光を取り入れる。
- 自動車の屋根:走行中に発電し、EVの充電を補助。
- スマートフォンケース:持ち運びながら充電が可能。
今後、私たちの身近な場所でもペロブスカイト太陽電池を目にする機会が増えるかもしれません。2030年までに、ビルの窓や電気自動車の屋根など、多様な用途での普及が進むと予想されています。

まとめ
- ペロブスカイト太陽電池は薄くて軽量、低コストで製造可能な次世代の技術。
- JR東海と積水化学工業が共同で新幹線の防音壁発電の実験を進めている。
- 2025年から本格的な実証実験が開始され、技術課題の解決が進められている。
- 将来的には、建物や自動車、モバイル機器などにも応用可能。
もし、ペロブスカイト太陽電池がさらに進化したら、私たちの生活はどう変わるでしょうか?例えば、服にこの技術が搭載されれば、歩きながらスマートフォンを充電できるかもしれません。
また、環境に優しいエネルギーの活用は、地球温暖化対策にも大きく貢献します。
ペロブスカイト太陽電池を活用することで、1平方メートルあたり年間約50kgのCO2排出を削減できるとされています。皆さんも未来のエネルギーについて考え、自分たちにできることを探してみましょう。新幹線が走るたびに発電する未来—それはもうすぐ現実になるかもしれません。