人類が半世紀ぶりに月の近くへ戻る有人飛行試験「アルテミス2(Artemis II)」が進んでいます。NASAはこのミッションで、新型ロケットSLS(スペース・ローンチ・システム)と宇宙船オリオンを用い、1972年のアポロ17号以来となる有人月周回飛行を実施します。同じ打ち上げでは、アルゼンチンの宇宙機関CONAEが開発した小型衛星「ATENEA(アテネア)」も搭載されます。

今回は、アルテミス2の狙いと飛行の流れ、ATENEAの技術実証、そして宇宙探査が地上の技術や社会に結びつく理由を見てみましょう。

アルテミス2とは何をするミッションか

アルテミス2は、アルテミス計画で初めてクルーが搭乗し、システム全体を実飛行で検証する段階にあたります。ミッションは約10日間で、地球を出発したオリオン宇宙船が月フライバイを行い、その後地球へ帰還します。
月の裏側を回り込み、地球から数千キロメートル離れた地点まで到達する計画が示されています。

ミッションの概要

項目内容
飛行の流れ地球出発 → 月フライバイ → 地球帰還
期間約10日間
主な機体SLSロケット/オリオン宇宙船
クルーNASA+カナダ宇宙庁の計4名

この飛行の主な目的は、オリオンの生命維持装置、通信、航法(進む方向を決める仕組み)などが、有人環境の深宇宙でも確実に機能するかを確認することです。あわせて、緊急時の手順や放射線対策を検証し、次の段階であるアルテミス3に向けた安全性の裏付けを取ります。
クルーは、NASAとカナダ宇宙庁から選ばれた4名の宇宙飛行士で構成されています。

ATENEAと国際キューブサットの役割

アルテミス2はオリオン宇宙船だけでなく、複数の超小型衛星(キューブサット)も同時に運びます。その一つが、CONAEが開発するATENEAです。

ATENEAは「12U」サイズの小型衛星で、複数の10センチ角ユニットを組み合わせた構造をしています。高高度の地球軌道に投入され、放射線や通信に関する技術実証を行う計画です。目的は次のように整理できます。

  • 放射線:
    遮蔽(しゃへい)条件の違いによる線量の測定、放射線スペクトルの取得
  • 位置・通信:
    将来の設計に役立つデータ収集、長距離通信リンクの検証

ATENEA以外にも、ドイツ、韓国、サウジアラビアなどが開発したキューブサットが搭載され、放射線観測、宇宙天気(太陽活動による宇宙環境の変化)の観測、電子部品の耐久評価などを担います。アルテミス2は、こうした国際協力による技術検証の場としても位置づけられています。

宇宙飛行士が行う科学実験

アルテミス2では、深宇宙環境が人体や行動に与える影響を調べる科学研究も組み込まれています。宇宙飛行士は、睡眠、ストレス、認知機能(考えたり判断したりする力)をウェアラブル機器で記録し、血液や唾液などを用いて免疫の変化も調べます。

また、船内センサーや個人線量計によって被ばく線量を測定し、放射線環境を把握します。さらに、月フライバイ中には月や周辺の宇宙環境を観測し、将来の月探査や深宇宙飛行に必要な基礎データを集めます。

なぜ世界は宇宙探査に挑むのか

各国の宇宙機関は、宇宙探査を通じて宇宙と地球への理解を深め、新しい技術を生み出すことを重視しています。宇宙開発で培われた技術は、通信、医療、材料分野などに応用され、私たちの生活を支えています。

また、地球観測衛星のデータは、気候変動の監視や災害対応、資源管理などにも利用されています。宇宙探査は、科学研究だけでなく、国際協力や人材育成を進める取り組みとしても重要な役割を担っています。

まとめ
  • アルテミス2は、SLSとオリオン宇宙船を用いた初の有人飛行試験で、有人月周回ミッションとして実施
  • アルゼンチンは、小型衛星ATENEAを搭載し、放射線計測や通信の技術実証でミッションに参加
  • クルーは健康や放射線に関する研究を行い、将来の深宇宙探査に必要な基礎データを取得
  • 宇宙探査は、科学的理解の向上に加え、地上技術への応用や地球観測データの活用など、社会との接点も持つ

アルテミス2とATENEAの事例は、巨大なロケットだけでなく、手のひらサイズの技術や、多様な国の協力が宇宙開発を支えていることを示しています。
宇宙テクノロジーは、エンジニアや研究者だけでなく、データ分析、通信、政策、医療など、あらゆる分野の知識が必要とされる総合的なプロジェクトです。
技術が進化し、宇宙が少しずつ身近になる中で、「自分が学んでいることや興味のあることが、どう宇宙や未来の社会とつながるのか」を、ぜひ想像してみてください。​​