アングル:AIに恋愛アドバイス求める人々、出会いからデートまで指南 | ロイター

マッチングアプリで相性が一致した女性のプロフィールを眺めていた米南部フロリダ州マイアミ出身のドミトリーさん(35)は、どうやって会話を始めれば良いか分からなかったので、人工知能(AI)恋愛コーチ付きデート支援アプリ「Rizz(リズ)」を活用することにした。

AIが恋愛相談に乗り、出会いやデートをサポートする時代が現実になりました。若い世代を中心に、マッチングアプリでの会話やプロフィール作成にAIを活用する人が増えています。
なぜ多くの人がAI恋愛コーチを頼りにするのでしょうか。AIによる安心感がある一方で、依存によるトラブルも各国で報告されています。
テクノロジーと人間関係のバランスを考えてみましょう。

AI恋愛コーチの登場:RizzとYourMove AI

AI恋愛コーチアプリ「Rizz」は、2025年10月時点で世界1,500万人以上が利用しています。相手のプロフィールを送信すると、AIが自然な会話文やメッセージを自動生成。月額約20ドルで、会話のきっかけづくりを支援します。

一方「YourMove AI」は、プロフィール添削や写真の加工にも対応。月額12.99ドルで、恋愛初心者から経験者まで幅広く支持されています。テクノロジーの進化により、知らない人とも安心して交流を始められる環境が整ってきました。

なぜAIに恋愛を相談するのか
  • 友人や家族には話しづらい悩みを、AIには気軽に打ち明けられる。
  • AIは否定せず、どんな内容も受け止めてくれる安心感がある。
  • 解決策や「次に何をすべきか」を即座に提示してくれる。
  • Z世代の約半数が、マッチングアプリでAIのサポートを利用した経験がある(電通2025調査)。

AIは、孤独や不安を抱える若者にとって“心の拠りどころ”になりつつあります。

安心感と依存リスクの境界線

AIとの会話は孤独をやわらげ、自己肯定感を高める効果があります。しかし、利用のしかたによってはリスクも伴います。

  • AIとの対話が生活の中心となり、人間関係や学業・仕事が疎かになる。
  • 「AIだけが自分を理解してくれる」と感じ始めたら危険信号。
  • 現実逃避の手段として依存し、生活リズムが乱れるケースも。

ドイツのある調査によると、64.9%の人が「AIに感情を共有できる」と回答しています。専門家は「AIは道具であり、心の支えをすべて委ねるべきではない」と警鐘を鳴らしています。

AI恋愛依存による実際のトラブル
  • AI恋人サービスに夢中になり、現実の恋人や友人関係が悪化した大学生。
  • 深夜までAIとチャットし、生活リズムが崩れた高校生。
  • AIとの会話を優先し、家庭の時間を失ってしまった主婦。

近年は、AI恋愛依存に関するカウンセリング相談が増加。心のケアとデジタルリテラシーの重要性が見直されています。

関連ニュースと研究動向
  • ドイツでは、AIを「親友」や「母親のように信頼できる存在」と答える人が増加。
  • AI恋愛アプリの利用増加に伴い、依存防止機能や利用制限機能の導入が進んでいる。

テクノロジーが人の心に深く入り込む時代、倫理的な設計と心理的サポートが求められています。

まとめ
  • AI恋愛コーチは、恋愛相談を身近にした新しいサポートツール
  • 利用の仕方によっては安心感を得られるが、過度な依存には注意が必要
  • 現実の人間関係を保ちつつ、AIとのバランスを取ることが大切
  • サービス提供企業には、安全性と倫理的配慮が求められている

AI恋愛コーチ市場は拡大を続けており、「感情を読み取るAI」はビジネスの世界にも応用されています。企業は顧客の“気持ち”を理解し、より個別化されたサービスを提供できるようになりました。しかし、感情データの扱いには慎重さが求められます。
AIと人間が共存する社会では、「心のつながり」をどう保つかが課題です。恋愛や仕事、学びの場でも、人間同士のリアルな関係を大切にしながらAIを使う――そのバランスを、私たちはどう見極めていくべきでしょうか。