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「AIが自動で香りを創作する時代がやってきた」と聞いて、どんな未来を想像しますか?
東京科学大学の中本高道教授ら研究チームは、生成系AIを使って言葉から香りを創り出す世界初のシステムを開発し、基礎実験に成功しました。これまで専門家しかできなかった調香が、AIの力で誰でも簡単にできるようになるかもしれません。

AIがどのように香りを作るのか、その仕組みや使い道、そして香りが私たちにもたらす良い影響について見てみましょう。

東京科学大学が開発した香り生成AIとは

世界初の香り自動創作システム
東京科学大学 総合研究院 未来産業技術研究所の中本高道教授(当時)を中心とした研究チームは、言葉から香りを創作できるシステムを開発しました。香りのイメージを表す「香り記述子」をAIに入力すると、それに合った香り成分の配合レシピが自動で生成される仕組みです。
従来の「香りを再現する技術」とは異なり、AIがまったく新しい香りを生み出す点が大きな特徴です。

拡散モデルを活用した香りの設計
この研究には、生成系AIの一種である「拡散モデル」が使われています。香り記述子から質量分析データ(マススペクトル)を生成し、そのデータをもとに精油の配合比率を導き出します。学習には57種類の香り記述子と166種類の精油データが用いられ、ニューラルネットワーク(多層パーセプトロン)によって香りと言葉の関係が学習されました。

実験で証明された香り生成の正確性

人の嗅覚による評価で裏付け
研究チームは、AIが作成した香りが意図したイメージと一致しているかどうかを人間の嗅覚で検証しました。2〜3種類の香り記述子を組み合わせて生成された香りを14名の被験者が嗅ぎ比べた結果、高い正答率で想定した香りが選ばれました。
さらに、既存の香りに新たな記述子を加えて作られた香りについても、23名の被験者が意図通りの香りを選んだことが確認されています。

誰でも香りをデザインできる時代へ
この技術によって、これまで専門知識が必要だった香りの調合が、誰でも手軽に行えるようになります。たとえば、自分だけのオリジナル香水を作ったり、デジタルコンテンツに香りを組み合わせたりと、活用の幅は大きく広がります。

香り生成AIの広がる可能性

生活・ビジネス・アートへの応用
AIでデザインされた香りは、ホテルや店舗での空間演出、ブランド商品の開発、アートやイベントの演出、さらには医療や健康分野でも活用が期待されています。香りはリラックス効果や集中力向上、ストレス軽減といった心身への良い影響をもたらします。
AIが個人の好みや目的に合わせて香りを調整することで、より豊かな香り体験が可能になります。

デジタル香り技術の未来
この研究は、香りをデジタルデータとして自由に扱える「デジタル香り技術」の基盤となります。将来的には、より複雑な香りをリアルタイムに生成したり、VRやARなどの空間で活用されたりすることが見込まれています。

まとめ
  • 東京科学大学は、言葉から香りを生み出す世界初の香り生成AIを開発
  • 香り記述子と質量分析データを使い、拡散モデルで香りを設計
  • 実験では人間の嗅覚によって、AIの生成した香りの精度が高いことが確認された
  • 香り生成AIは、生活、ビジネス、アート、医療など多様な分野で活用が進んでいる
  • デジタル香り技術の発展により、誰もが香りを自由にデザインできる未来が広がっている

AIによる香り創作技術は、暮らしや学び、仕事の体験をより豊かにします。あなたがもしAIに香りを作ってもらえるとしたら、どんな香りを選びますか?リラックスできる香り、集中力を高める香り、思い出をよみがえらせる香り…。AIと一緒に自分だけの香りをデザインすることで、新しい発見や感動がきっと見つかるはずです。ぜひ、家族や友達と一緒に、香りとAIの未来を体験してみてください。