インドの10代3人が塩を利用した保冷庫を発明…電気のない農村に医療物資を届けるために | Business Insider Japan
この冷蔵ユニットは、再利用可能な塩の水溶液を使用してワクチンを冷却するものです。この装置を製作した若者たちは、120の病院でその効果をテストする計画です。
「もし電気が使えない場所で、薬やワクチンを冷やすにはどうすればいい?」 そんな疑問に挑んだのは、インドの高校生3人でした。 彼らが開発したのは、塩の力で冷やす新しい冷蔵庫「サーマヴォルト」。
この革新的な発明は、世界的な環境賞「アースプライズ」を受賞しました。 サーマヴォルトの技術や仕組み、他の応用例、そして将来の可能性について紹介します。
サーマヴォルトの仕組みとは?
特別な塩の冷却効果
サーマヴォルトでは、「塩化アンモニウム」や「水酸化バリウム八水和物」といった塩を使います。 これらが水に溶けると、熱をうばって水の温度を下げる「吸熱反応」が起こります。 たとえば、氷に塩をかけると冷たくなるのと同じ仕組みです。
最新の冷却技術「イオノカロリック冷却法」
この冷蔵庫は、「イオノカロリック冷却法」という先端技術を使っています。 塩が水に溶けると、電気を帯びた粒(イオン)が分かれて熱を吸収し、冷却が進みます。 塩化アンモニウムだけで2~6℃まで、さらに水酸化バリウム八水和物を加えると0℃以下にまで冷やせます。
シンプルな構造と再利用性
サーマヴォルトは、プラスチックと銅でできた断熱容器です。 塩と水を混ぜて中に入れるだけで、電気を使わずに10時間以上冷却が続きます。 使い終わった後は、加熱して水分を飛ばせば塩を再利用できます。
塩の冷却技術はこんなところにも
食品業界で使われる冷塩水機
業務用の「冷塩水機」は、塩を溶かした水で食品を素早く冷やす装置です。 塩水は純水よりも低い温度で凍るため、マイナス温度での冷却が可能です。 精肉や魚の加工に役立っています。
家庭用の冷却マット
塩化カルシウムを使った冷却ジェルマットは、体温を吸収して長時間ひんやり感を保ちます。 夏の寝具やペット用マットとして人気があります。
医療やエレクトロニクス分野でも注目
塩の冷却効果は、空調設備や電子機器、医薬品の保存にも応用が進んでいます。 環境にやさしく繰り返し使えるのが大きな強みです。

環境賞「アースプライズ」とは?
アースプライズは、10代の若者が環境問題の解決策を競う国際的な賞です。 過去には、洗濯排水を再利用する装置(トルコ)、ドラゴンフルーツの皮から作るナプキン(ベトナム)、 食品ロスを減らすアプリ(ジャマイカ)などが受賞しています。 どれも身近な問題に科学の力で向き合ったアイデアです。
まとめ
- サーマヴォルトは電気なしで使える冷蔵庫で、塩の冷却効果を活用
- イオノカロリック冷却法により、2~6℃や0℃以下の冷却が可能
- 塩の冷却技術は、食品、生活用品、医療や空調など多くの分野で活用される
- アースプライズは、10代の若者が世界の課題に挑戦する国際的な舞台
塩の力と科学の知恵を使えば、電気がなくても冷やせるという革新が生まれました。 こうした環境にやさしい技術は、新しいビジネスチャンスにもつながります。
あなたなら、どんな身近な問題をどんな方法で解決しますか? 発明やアイデアは、大人だけのものではありません。 未来を変えるヒントは、あなたのまわりにもあるかもしれません!