[SHIMADZU] 世界初、小型化に成功した光格子時計を発売開始 次世代の時間計測技術の実用化へ | 島津製作所

島津製作所は、3月5日に18桁精度に相当するストロンチウム光格子時計「Aether clock OC 020」(イーサクロック、以下、本製品)の受注を開始します。光格子時計は原子時計の一種で、現在の「秒」の定義の基準となっているセシウム原子時計に対して100倍以上の精度を…

みなさんは「時間」をどれほど正確に測れるか考えたことがありますか?
普段使っている時計は1日に数秒ずれることもありますが、島津製作所が開発した「光格子時計」は、なんと100億年経っても1秒しか狂わない驚異的な精度を持っています。

この最新技術がどのように動き、どんな未来を切り開くのかを見てみましょう。

光格子時計とは?その仕組みと驚異的な精度

原子の振動を利用した超精密計測
光格子時計は、特定の原子が持つ規則的な振動を利用して時間を測る装置です。
例えば、ストロンチウム原子は一定の周波数で振動し、その振動をレーザー技術で精密に測定することで、極めて正確な時間の計測が可能になります。

現在、世界の時間基準として使われているセシウム原子時計よりも100倍以上正確です。セシウム原子時計の誤差は数百万年に1秒とされることが一般的ですが、光格子時計は100億年経っても1秒しか狂いません。

レーザー光で原子を捕まえる
この時計はレーザー光で作った「光の格子」の中に原子を閉じ込め、その振動を精密に測定します。この仕組みにより、従来の技術では不可能だった高精度な時間計測が可能となりました。

こんなことに光格子時計が使える!

地殻変動や火山活動の監視
光格子時計はわずか1センチメートル程度の標高差や地殻変動を検出できます。これは、重力ポテンシャルの微細な変化を高精度に測定することで可能になります。標高が高くなると重力がわずかに弱まり、原子の振動数が変化します。
この違いを光格子時計で捉えることで、地表のわずかな動きも検知できます。この技術は火山活動や地震予知など、自然災害への対応に役立つ可能性があります。

津波や自然災害の予測
重力ポテンシャル計として利用することで、津波などの自然災害を事前に予測する精度が向上すると期待されています。

衛星測位システム(GPS)の代替技術
超高精度な測地技術を提供し、従来の衛星測位システム(GPS)よりも正確な位置情報サービスが実現するかもしれません。

通信技術への応用
光格子時計は協定世界時(UTC)の時刻同期精度を±5ナノ秒以内に向上させることが可能です。これにより、大容量通信やタイムビジネス分野で革新的な進展が期待されています。

基礎科学研究への貢献
高精度な時間計測を活用して暗黒物質探索や素粒子物理学の新理論検証など、基礎科学研究にも大きく貢献します。

なぜこんなに高額なのか?

光格子時計は希望販売価格が5億円と非常に高額ですが、これは他の高精度時計と比較しても飛び抜けた技術力を有しているためです。
例えば、セシウム原子時計の価格は数千万円程度ですが、光格子時計は100倍の精度を誇り、より高度なレーザー技術や原子制御技術が求められます。

そのため、以下の要因が価格を押し上げています:

  • 最先端技術
    • セシウム原子時計よりも100倍以上正確という驚異的な精度。
    • レーザー技術や原子物理学など、高度な専門技術が集約されています。
  • 研究開発コスト
    • 東京大学や理化学研究所との共同研究など、多くの専門家による長期的な研究。
    • 小型化や自動調整機能など、新しい技術開発への投資。
  • 製造の難しさ
    • 超精密部品と高度な製造プロセス。
    • 限定的な需要による少量生産。
  • 限定的な市場
    • 主に研究機関や標準機関向けであり、大量生産には至っていない。

これらすべてが合わさり、高額な価格設定となっています。しかし、この技術は将来的に多くの分野で革新をもたらす可能性があります。

光格子時計が他と比べてどれほど有意なのか?

光格子時計は他の時計技術と比較して圧倒的な優位性があります:

  • 精度
    • セシウム原子時計:3000万年~2億年に1秒の誤差。
    • 光格子時計:100億年に1秒の誤差。これはセシウム原子時計の100倍以上正確です。
  • 時間計測速度
    • 一度に多数の原子を計測できるため、イオントラップ法よりも100万倍速く正確です。
  • 相対論的効果への対応
    • アインシュタインの一般相対性理論を応用し、高低差による時間遅れを精密に検出できます。これにより標高差測定や重力ポテンシャル計測が可能です。
まとめ
  • 光格子時計は100億年に1秒しか狂わない驚異的な精度を持つ。
  • 地殻変動監視、災害予知、通信技術改善など幅広い応用が期待される。
  • セシウム原子時計よりも100倍以上正確であり、新しい時間基準として注目されている。
  • 高額ではあるものの、その価値は科学技術革新や社会基盤構築への貢献から見ても非常に大きい。

この超高精度な「光格子時計」が切り開く未来について想像してみましょう。
例えば、自動運転車がさらに安全になるためには正確な位置情報が必要です。また、医療分野では高精度な時間計測を活かして、脳波や心拍データのリアルタイム解析が可能になるかもしれません。さらに、超高精度な時刻同期技術を用いた量子通信の発展にも貢献するでしょう。

あなたならこの技術をどんな分野で活用したいと思いますか?科学技術が私たちの日常生活をどう変えていくか、是非注目してください。