1500万人のDNA情報を競売へ-米遺伝子検査「23andMe」が経営破綻 - Bloomberg

消息不明の親族探しやDNAに埋め込まれた疾患リスクの特定を期待して23andMe(トゥウェンティー・スリー・アンド・ミー)に唾液を郵送した多くの米国人の遺伝子情報が競売にかけられようとしている。プライバシーと安全性に関する現行の法的保護制度が試されることになる。

あなたの唾液から得られる遺伝情報。それが他人の手に渡るとしたら、どう感じますか?
アメリカの遺伝子検査企業「23andMe」が経営破綻し、1500万人以上の顧客データが売却される可能性があるというニュースが話題になっています。この出来事は、私たちの大切な個人情報をどう守るべきかを考える大きなきっかけとなっています。

23andMe破綻の背景と影響

23andMeは、唾液を送るだけで祖先のルーツや病気のリスクを知ることができるサービスとして人気を集めていました。しかし、経営難により破産法の適用を申請し、顧客の遺伝情報が他企業に売却される可能性が出てきました。

なぜ破綻に至ったのか
  1. 大規模なデータ漏洩:2023年に約700万人分の情報が流出し、信頼を大きく損ないました。
  2. 収益モデルの弱さ:一度の検査で完結するサービスが多く、継続的な利益が得られにくい仕組みでした。
  3. 市場価値の低下:需要の減少や研究機関からの収益減で、企業価値が大きく下がりました。
  4. 経営戦略の迷走:経営陣の交代や方向転換がうまく機能せず、立て直しに失敗しました。
拡大する遺伝子ビジネスの世界

23andMeのケースは一例にすぎません。遺伝子検査市場は世界中で広がっており、医療や健康管理、さらには個別化されたサービス提供など、多様な可能性を持っています。

日本の主要企業

  • NTTライフサイエンス:「Genovision」で予防医療に力を入れています。
  • ジーンクエスト:日本初の個人向け大規模遺伝子検査サービスを展開。
  • KEAN Health:AI検索機能を搭載した「chatGENE Pro」を提供しています。

海外の注目企業

  • Igenomix(スペイン):不妊治療に特化し、日本にも進出。
  • Diagnomics(アメリカ):アジア市場での展開が活発です。
  • 54gene(ナイジェリア):アフリカ系住民のゲノムデータを活用したサービスを開発中です。
遺伝子検査のリスクと課題

遺伝子情報は一度流出すると回収できません。そのため、慎重な扱いが求められます。

  • 個人識別が可能:DNAは究極の個人情報であり、匿名化しても特定されるリスクがあります。
  • 使用目的が不透明:研究や提携企業への提供など、どこまで使われるかが見えにくいケースがあります。
  • 保険への影響:生命保険や医療保険の審査に悪用される懸念があります。
情報を守るためにできること
  • サービスのプライバシーポリシーをよく読む
  • データの保存場所と削除方法を確認する。
  • 安易にDNAを提供せず、慎重に判断することが大切です。

2024年3月、アメリカではAIと組み合わせた新しい遺伝子解析サービスが登場しました。これにより、より強固な個人情報保護のルール作りが求められています。技術の進化とともに、倫理や法律の整備も急務です。

まとめ
  • 遺伝子ビジネスは医療や健康の可能性を広げる技術です。
  • 一方で、情報漏洩や悪用といったリスクも抱えています。
  • サービスを利用する前に、内容や管理体制を確認しましょう。
  • 自分の情報を守る意識がこれからますます重要になります。

遺伝子情報は一生変わらない、あなたの設計図のようなものです。それが企業の収益の一部として利用されたり、知らぬ間に他人と共有されたりすることもあります。
スマホアプリの利用規約に簡単に同意してしまうように、私たちは日々「情報を預ける」行為をしています。これからの時代、自分の情報をどう守るかを考え、自分で選ぶ力を育てていくことが大切です。