「王家の谷」の王墓、ツタンカーメン以来100年ぶりの大発見 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト

紀元前15世紀に君臨し、女王ハトシェプストの夫としても知られるトトメス2世の墓が見つかった。エジプト第18王朝では最後の未発見の王墓だった。

2025年2月18日、エジプト観光・考古省は、古代エジプト第18王朝のファラオであるトトメス2世の墓を発掘したと発表しました。この発見は、1922年のツタンカーメン王の墓発見以来、約100年ぶりとなる王墓の発見として考古学界に大きな衝撃を与えています。

トトメス2世は紀元前1493年頃から紀元前1479年頃にかけて統治し、強力な女性ファラオとして知られるハトシェプスト女王の夫でもありました。今回の墓の発見によって、彼の治世や埋葬の習慣に関する新たな手がかりが得られることが期待されています。

トトメス2世の墓の発見

トトメス2世の墓は、エジプト南部ルクソールの「王家の谷」から西へ約2.4キロの地点で発見されました。イギリスとエジプトの合同考古学チームが2022年に墓の入り口を発見し、その後の調査によって王の墓であることが確認されました。

墓の内部からは、トトメス2世の名前が刻まれたアラバスター製の壺の破片が見つかり、これが王の墓であることを特定する決め手となりました。また、壁には王家の葬儀を記したヒエログリフ(象形文字)が描かれ、天井には星々の装飾が施されていました。

王家の谷
最新技術が解き明かす考古学の未来

この発見は、考古学の分野で最新技術の活用が進んでいることを示しています。以下に、今回の発掘で活用された主な技術を紹介します。

地中レーダー探査(GPR)
地中に埋もれた遺跡の構造や空洞を非破壊で検出する技術です。これにより、発掘前に地下の状況を正確に把握し、効率的な調査が可能になります。

3Dマッピング
遺跡の立体的な構造をデジタルで記録し、精密な保存や分析を可能にする技術です。これにより、墓の内部構造を再現し、現地を訪れることなく研究を進めることができます。

AI(人工知能)分析
AIを活用することで、発掘された遺物の識別やデータ解析が自動化され、より迅速かつ正確な考古学的調査が可能になります。特に、ヒエログリフの解析や出土品の分類に活用されています。

X線CTスキャン
非破壊で遺物やミイラの内部構造を詳細に調査する技術です。今回の発掘でも、出土した遺物の内部分析に活用されました。

トトメス2世の墓の歴史的意義

トトメス2世の墓の発見は、古代エジプトの埋葬習慣や王族の生活をより深く理解するための重要な手がかりとなります。特に、彼の時代の宗教的儀式や埋葬の方法に関する新たな情報が得られる可能性があります。

発掘チームの責任者は、「この地域には、トトメス1世やアメンホテプ1世など、他のファラオの墓が存在する可能性もある」と述べており、今後の研究がさらに進められる予定です。

考古学と技術の進化

これらの最新技術の導入により、考古学は従来の「掘る」作業から、データ分析や非破壊調査といった新たなアプローチへと進化しています。これにより、過去の文明についての理解が深まるだけでなく、文化財の保護にも貢献しています。

将来的には、拡張現実(AR)技術を活用し、誰でも古代エジプトの王墓を仮想的に探検できるようになるかもしれません。考古学と最先端技術の融合が、過去と未来をつなぐ架け橋となっています。

まとめ
  • トトメス2世の墓が約100年ぶりに発見され、考古学界に大きな衝撃を与えた。
  • 発掘には地中レーダー探査、3Dマッピング、AI分析、X線CTスキャンなどの最新技術が活用された。
  • 墓内の遺物から、トトメス2世の名前が刻まれた壺やヒエログリフが発見された。
  • AIやデータ解析を活用することで、発掘の効率と精度が向上している。
  • 今後の研究により、さらなる歴史的な発見が期待される。

トトメス2世の墓の発見は、考古学と最先端技術の融合によって生まれた成果です。皆さんも、将来の考古学者や技術者として、古代の謎を解き明かす挑戦をしてみませんか?