海外では不名誉?38歳教授が見た「イグ・ノーベル賞」◆赤子救う「お尻呼吸」、MITで喝采【 #取材班インタビュー:武部貴則さん】:時事ドットコム
「哺乳類はお尻から酸素を取り込める」―。東京科学大の武部貴則教授(38)が率いる研究チームが、独創的でユーモラスな研究を表彰する「イグ・ノーベル賞」の2024年生理学賞に選ばれた。将来は赤ちゃんの命を救う可能性を秘めているという「お尻呼吸」。日米を行き来しながら多忙な日々を送る武部教授が、一時帰国した機会に、インタビューに応じてくれた。受賞の裏側や、ユニークな研究への思いを聞いた。(時事ドットコム取材班 長田陸)
「お尻から呼吸できるって本当?」そんな面白い研究で、東京科学大学の武部貴則教授が2024年の「イグ・ノーベル賞」を受賞しました。
この研究は、赤ちゃんや呼吸が難しい患者を助ける新しい可能性を秘めています。
イグ・ノーベル賞って何?
「イグ・ノーベル賞」は、ちょっと変わった科学研究を表彰する賞です。1991年に始まり、「笑わせて、考えさせる研究」が選ばれます。
有名な例では「バナナの皮でなぜ滑るのか」や「猫は液体か?」というユニークな研究があります。これらはただの面白い話ではなく、科学の新しい発見や発想につながる大事な研究です。
おもしろい過去の受賞作品
これまでに受賞したユニークな研究の中から、いくつか紹介します。
- 「バナナの皮の滑りやすさ」(日本、2014年)
バナナの皮が滑る理由は、皮の内側のゼラチン状の成分が摩擦を減らすからと発見されました。この研究は転倒防止や安全基準の改良に役立つとされています。 - 「猫は液体か?」(フランス、2017年)
猫が柔軟性の高い体で、液体のように容器にぴったり収まる特性を科学的に分析した研究です。 - 「ワインの味に影響を与える音楽」(イギリス、2008年)
ワインを飲むときに流れる音楽が味覚に影響を与えるという研究。クラシック音楽を聴くとワインが高級に感じられるそうです。 - 「磁石で義歯を操作する方法」(ドイツ、2003年)
舌に磁石をつけて、手を使わずに義歯を動かす方法を研究。障害を持つ人々の助けになっています。 - 「チキンに尻尾をつけて恐竜の歩行を再現」(チリ、2015年)
鶏に人工の尻尾を付けて、恐竜がどのように歩いていたかを研究しました。
「お尻呼吸」の研究とは?
武部教授の研究では、酸素を多く含む特殊な液体をお尻から注入し、呼吸不全の動物が酸素不足を乗り越えられるかを調べました
。実験では、低酸素状態のマウスやブタにこの液体を注入したところ、血液中の酸素量が大幅に増え、数分で改善が見られました。この技術は、赤ちゃんや新型コロナウイルスで呼吸が苦しい患者を助ける可能性があります。
なぜ日本人の受賞が多いの?
日本人の受賞は18年連続です。日本人が多く受賞している理由には、独特な研究環境があります。研究者が自由にアイデアを試せる環境が、ユニークな発見につながるのです。
たとえば、2022年に受賞した「クモを使ったロボット操作」(渡邊恭平氏)なども、日本ならではの発想です。
まとめ
- イグ・ノーベル賞はユニークで、考えさせる研究を表彰する。
- 「お尻呼吸」は新しい医療技術として期待されている。
- 日本の研究環境は独自のアイデアを育てる土壌となっている。
- 過去には「猫は液体か?」などの面白い研究も受賞している。
科学は難しいものに思えるかもしれませんが、実は「どうして?」と考えることが始まりです。たとえば、ペットボトルを逆さにしたとき水が出ない理由を調べたり、重曹と酢で泡が出る実験を試してみてください。未来の研究者は、あなたかもしれません!